2019年03月03日
平成最後の解禁釣行
別にだからどうだというわけでもないが、平成という年号での最後の解禁釣行に行ってきた。フライフィッシングを始めたのが1994年ごろだから年号でいうと平成6年ごろ、自分の人間としての成り立ちはまさしく昭和のそれだと思うが、フライフィッシャーとしては平成の人なのだ。できれば昭和のうちにフライを始めていて昭和のフライマンと言いたかったが、5年以上も時間差があっては致し方無い。
平成という時代は何もかもがデジタルになってそれはそれで便利でいいのだが、反面あらゆるものが薄っぺらになっていくようで落ち着かない。上っ面だけがものすごい速さで変わっていくような感覚だ。しっかり腰をすえてなんてことを言っていると腰かけたつもりのいすが実は風船のようなものだったりする。ふわふわと心地はよいがちょっと一突きすればはじけてしまいそうで次々と腰の下ろしどころを替えていかなければならないのだ。
そこへ行くとフライフィッシングなんていうのはこの30年のあいだに変わってしまったことなど何もないように感じる。ロングリーダーとかスペイキャスティングとか30年前には聞かなかった言葉もあるにはあるがデジタル化社会のように世の中が一変してしまったようなことではない。
ロングリーダーもスぺイもごく一部の人は気合をいれて取り組んでいるのだろうが大半の人は、まあ興味はあるけど別にそれじゃなきゃだめってわけじゃないから・・・とのんびりしたものなんじゃないかと思う。フライフィッシングの人気がない、と言われて久しいがフライのこのあまり変化しないこと、ゆっくりとした時間の流れがデジタル時代の時間感覚に合わないのかもしれないという気もする。私などはだからこそフライがいいんだと思うのだが。
どうも解禁の話はどうしたんだといわれそうだが、おさっしの通りで芳しくはなかった。1日と2日と1泊しての釣りだったが辛うじてヤマメの顔は見ることはできたけれど、という惜敗だった。
解禁日のお祭り騒ぎを避けてあえて放流とは無縁の支流に足を延ばした。放流魚でもなければ魚が動き始めるのはお昼近くなってからだろうとゆっくり家を出て川に着いたときは9時をまわっていた。本流の駐車場はすでに車がいっぱいだった。この支流にも3台ほどの車が止まっていた。適当に距離をおいて車を止めて支度をした。天気はよくて気温も思ったより高い、今日はいい釣りができるかもしれないと期待が高まった。先月、秩父FFでちょっと釣りをしたが本格的にロッドを振るのはひさびさだ。ロッドはアスキスの7'6" #2-3 12ft 、5X のリーダーに6Xと7Xのティペットを2ft ずつつないだ。フライはとりあえず#18 のメイフライを選択した。
久しぶりのキャスティングで16ft のリーダーシステムは長すぎるかなとも思ったが、風もないのでなんとかなりそうだった。キャスティングは思ったよりもうまくできて気持ちがよかったが川の生命感は希薄だった。この時期なら緩い瀬のお尻に定位しているヤマメの姿があってもよさそうなものだがまったく見えない。走るヤマメの影も皆無だった。ときおり小さなカゲロウかユスリカが舞っているのが見えるが、ライズを誘うようなハッチはなかった。
釣り始めて1時間を過ぎたころやっと小さな飛沫が水面に散った。
解禁の1匹、ぜいたくは言えないとはいえ、あまりにもかわいいヤマメだった。それでも春のあいさつをしにきてくれたのだ。逃げられないようにネットに収めてカメラのレンズを向けた。今回は先日、手に入れたミラーレス一眼カメラのデビュー戦でもある。デビューの相手としては少々物足りないサイズだがコンデジとは一味ちがうという実力を見せてくれとシャッターを押す。
しかし写った写真はこうしてみるとコンパクトカメラで撮ったのと大差はない。いや、PCのビューワーで見ると少しだがコンパクトカメラの画像とは違うシャープさがわかるのだが、こうしてブログに乗せてしまうと違いがないように感じる。よくはわからないが画像データの変換過程でこうなってしまうのだろう。
最初の1匹が釣れてしばらく、さらに小さなヤマメがかかった。ヤマメを釣ったというのに気が引けるオイカワサイズだ。このチビさんはいつものTG-2 で撮った。とりあえず記録としては残しておくためにカメラは2台持ってきた。
お昼をまわったところでランチタイム、今回はコンビニおにぎりとコーヒーで手早く済ませることにした。魚は釣れないがやはり渓流にいることだけで幸せな気持ちになれる。朝のうち着こんでいたダウンジャケットはとうに脱いで薄手のフリースになっていたが寒くはなかった。陽だまりに腰を下ろしてコーヒーをすする時間は何度やっても至福のひとときだ。
昼休憩からまた1時間ばかり何事もない時間が過ぎ、流れがこの先で岩盤にぶつかって直角に向きを変えるゆるい落ち込みに出会った。そしてその瀬尻からヤマメが飛び出した。
待望のロッドを曲げてくれる1匹だった。ばれるなよ、とつぶやきながらロッドに伝わる生命感を楽しむ。ネットに収まったのは22cmほど、大きくはないがほんとうに贅沢はいえない。まずまずのヤマメだ。
今度の写真は顔にピントを合わせて魚体はきれいにボケてくれていた。そうそう、こういう奥行きのある写真が撮りたかったのだ。釣りあげたときに一度、そしてカメラのモニターを見てきれいな写真が撮れたとわかってもう一度「よしっ」という気合が口をついた。
1日目はもう1匹、これもまったくのチビサイズなヤマメを釣って竿を収めることにした。
2日目、宿でのんびり時間を過ごし、川に着いたのはこの日も9時を過ぎていた。解禁2日目の土曜日とあって釣り人は多そうだったが、早く着いたからといって魚にやる気がなければ同じことだ。
前日を上回るような快晴、少しだけ風があるのでタイミングをとりながらロッドを振った。今日はBlue Heron 7'6" #2-3 のロッドに替えている。風がある分リーダーは1ft ほど短めにした。
堰堤の直上から川に下りると堰堤上のほとんど流れがないようなプールにヤマメの姿がふたつ見えた。岸寄りにいるヤマメは中層を流れてくる餌を食っているようでときおり泳ぎまわっていた。もう1匹は底近くに定位して動かない。この静かな水面ではラインの気配を感じただけで逃げられそうだったので、とりあえず写真を撮っておこうかと思ったがゴソゴソとカメラを取り出そうとしているうちに2匹とも逃げてしまった。それでもヤマメの姿を確認出来てほっとした。
ほっとしたのはいいが1日目以上に生命反応は希薄だった。昨日は釣れないまでもなんどか反応はあったのだがこの日は皆無といってよかった。ウーンと首をひねりつつ歩を進めていくと日当たりのいいプールの対岸に数匹のヤマメが定位しているのが見えた。朝の件があるから、写真なんて撮ってる場合じゃないと慎重にロッドを振った。フライはいいところを流れるのだがヤマメたちは見向きもしてくれなかった。流し方がどうの、というどころじゃなくまったく捕食のスイッチが入っていないとしか言いようがなかった。フライを何度流しても逃げるそぶりも見せない、お手上げだった。

写真はかなりトリミングしてある。私の眼には6匹の”パーマーク”が見えるのだがどうだろうか。
けっきょく2日目は一度だけ小さなしぶきが上がっただけでヒットはなく完敗となってしまった。今年は暖かい日が多く春の訪れが早いのではないかと期待したが、川の中に春が来るのはもう少し先のようだった。

重い足を引きずって川から上がろうとしてふと思い立った。流れがなめらかな残像として映っているような写真を撮りたいと思っていたのだ。シャッター速度を遅くして撮ればいいのだということは知っていたが、どれくらいの速さがいいのかわからないので適当に変えながら撮ってみた。この写真は1/3秒で撮ったものだが、1/3秒なんていうと手振れしてまともに写らないんじゃないかと思ったが、今のカメラはよくできていてほとんど手振れもせずに写っていた。

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Posted by wind knot at 15:14│Comments(0)
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