2024年01月08日
ミルキートーンのシャックフライ

解禁の準備というにはまだ早いなあ、と思いつつちょっとしたアイデアを思いついたのでフライを巻き始めた。
今年も解禁は上野村で迎えるつもりでいる。上野村の神流川は放流量が多い代わりに釣り人も多いからヤマメたちは解禁後あっという間にスレてしまう。解禁初日などは大混雑といってもいい状況になるから早くても2日目以降に出かけることにしているが、そうすると解禁したばかりなのにもうスレスレ、なんてことも多い。
解禁当初の釣りといえばハッチはカワゲラかユスリカで、ともに水面と水中の二つのステージに備えたフライを準備しておく。カワゲラ、ユスリカともにフライパターンはほぼ確立されているが、スレ始めたヤマメたちはかんたんには口を使ってくれなくなる。フィッシングプレッシャーに加えて天候の要素などもからみ、魚はたくさんいるのに解禁早々シビアな釣りが要求されることは何度も体験している。
3月も中盤以降になると悩まされるのがシャックの大量流下だ。学習を重ねて用心深くなったヤマメたちは実体の虫をイメージしたフライには手を出さなくなってフワフワと漂う抜け殻のみを捕食するようになる。シャックを模したフライにだまされるようなものがないのをわかっていて、シャックだけ食っていれば安全だといわんばかりのシャックイーターたちがあらわれるのだ。
一昨年4月初旬に採取したストマック、いくつかは中身の詰まったものも食べてはいるが大半を占めるシャックの量に圧倒される。ここまでじゃなくても早い時期からシャックを捕食しているヤマメも多い。
そこでシャックのフライ。世の中で知られたそのパターンというと半透明のポリフィルムや化学繊維の束などをフライのお尻に巻き留めて、これってシャックに見えない?というものやボディをモノフィラで巻き上げてなんとなくボディが透けて抜け殻っぽく見えるんじゃないか?というような感じのパターンが多い。ストレッチ性のあるリブ材を熱したフォーセップなどではさんで縞模様をつけてからお尻に取り付ける、なんていうのもよく知られたやり方だろう。
これらの方法はあらかた試してはみたが、なかなかしっくりくるものには出会えていない。人間の目にはそれっぽく見えても魚たちにはそうは見えていないのだろう。それを言ったらフライなんてみんなそんなものだとも思うが、シャックに関してはそのズレが甚だしくてたぶん魚たちはそれらのフライをまったくシャックとして認識していないのだろうと思う。そんなことは十分に承知しているがやっぱり何とかしたいというのがフライマンの人情で、別にこれがなくたって何とかなるんだけど、と言いつつ思いついた一つのアイデア。
たまたまダイソーで買ってきたプレゼント包装用のリボン、なんかに使えるかなとほぐしてみるとまあいわゆるフラッシュティンセルとして使えそうだった。
手持ちのティンセルにはこういう乱反射タイプのものはなかったからちょうどいいかなと思った。細いのでリブとして使うには強度に不安があるかな、レジンでボディごと固めてしまうようなミッジ系にはいいかもしれない。リブじゃなくてアンダーボディとしてもよさそうだと、巻いてみるとちょっと光りすぎだ。上から薄色のスレッドを巻いて光を弱めてみるとこれはありだったが、ふと思いついたのはいっそのことレジンを濁らせたほうがいいんじゃないか?という考え。
さっそくクリアのUVレジンにホワイトのUVジェルネイルをごく少量混ぜてみるといい具合の半透明乳白色レジンになった。これをティンセルのアンダーボディにコーティングしていく。いっぺんに塗らず2~3回にわけて塗ってユスリカピューパっぽく成型する。
ティンセルのメタリックな輝きが抑えられるというか、ギラギラの輝きをホワイトの粒子がボディコーティング全体に乱反射してアンダーボディ=フックシャンクの存在を隠してくれるように見える。ボディ全体が疑似的に半透明で光を透過しているような感じといったらいいだろうか。ここでこれってもしかしたらシャックっぽく見えるんじゃないか?と気づく、なんだか大発見をしたようでうれしくなってきた。
乳白色はミルキーホワイトというのだろうが、どちらかというとフロストガラス的なというほうが近いかもしれない。フロストガラスの電球やランプのホヤがガラス全体に光を回して光源をあいまいにするようなイメージに似ている。
ホワイトを混ぜる量を変えたりいろいろとやってみる。ゴールドのリボンも買っていたのでゴールドバージョンも巻いてみた。黒のレジンを薄くコーティングするとよりシャックっぽさが増すようにも見える。
ソラックスにラビットファーを巻くとメイフライやカワゲラのシャックにもなりそうだ。
このボディはホワイトレジンを混ぜていないクリアのまま、光が強すぎるようにも見えるのだが意外とこっちのほうが目立っていいかもしれない。
ホワイトを混ぜるとこうなる。
♯22に巻いてサーフェスフィルムに張り付いた体長4㎜のシャックを表現。
こちらはカワゲラバージョン。
最終的にアンダーボディ→乳白のレジンを2~3層→黒のレジンを薄くひと塗り→リブ(スレッド各色)→補強と艶出しのクリアレジンを軽く塗る、という工程に落ち着いてきた。レジンを塗る都度UVライトを当てて硬化させなければならないのでけっこう手間がかかるが作業としてはなかなかおもしろい。レジンの調合の加減やスレッドとの相性などまだまだ改良の余地もたっぷりある。
このパターンが長年の課題であるシャックフライのひとつとなってくれるとうれしい。とはいえ最初にもどってしまうがこれはあくまで人の目にはシャックっぽく見えるというだけのこと。魚たちがすんなりそう見てくれるとも思ってはいないが、こうしてあれこれ考えながらフライを巻くのがこの季節の楽しみの一つ。これはこれでいいよね、と思っている。
ついでに巻いたカワゲラフローティングニンフ。
カワゲラアダルト。この2本はシャックということではないから光の透過性にこだわっているわけではないが、ゴールドのティンセルを使うことで琥珀のような輝きを放つボディになるのが楽しい。魚がどう見てくれるかより、巻いている本人が作っていて楽しいのが肝だ。
ところでこうしたシャックのフライを考えている間、なにか参考になることはないかとネットを探してみたがほとんど出てこない。flytying shack で検索するとヒットするのはシャックを引きずっているいわゆるスティルボーンタイプのフライぐらい。抜け殻だけのシャックフライなどというものはどうも海外のフライフィッシングシーンには存在しないようだ。
もっとも一般渓流のネイティブなヤマメを釣ってストマックを見たら大量のシャックが出てきたなんてことはまずない。シャックばかり爆食いしているようなヤマメというのは上野村のC&R区という特殊な環境でしか出会うことがないのかもしれない。そういう意味では極めてニッチなニーズのフライなのだ。シャックフライ?なにそれ?というフライマンのほうが間違いなく圧倒的に多いだろう。
解禁が待ち遠しい。その前にハコスチを相手にミルキーシャックを試してみるのもいいかな。

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Posted by wind knot at 09:46│Comments(0)
│フライフィッシング