2022年08月10日
続南会津釣行

南会津の3日目は初日に入った渓のさらに支流。ここは南会津に訪れるたび毎回のように入ってみようと思いながら、なかなか入渓の機会がなかったところだ。
前にほんの入り口だけ覗いてみたときは、木々に覆われたやや暗い流れのイメージがあったのだが、ここを過ぎると開けた渓相に変わるらしい。もっとも今回は入ってすぐもそれほど暗いという感じはしなかった。
ここもやはり白っぽい川底が多いが底の形状は白っぽい岩盤が露出している部分が目立つ。高低差は少ないので岩盤の滑床でも魚は付いていそうだった。
ここでファーストヒットだったがそのままファーストブレイク。初日の渓に比べてひとつのランが短く流れの効いている筋が多い。その分ポイントは明確なのだが。
そういえば初日は中盤にいい思いができて釣果は二ケタ越え、この調子ならダブルのツ抜けもとほくそ笑んだのだが終盤にきて、ガクッと当たりがなくなった。魚がいないわけではなくてかなり上流にきたせいか水が減ってきた感があり、とにかくイワナたちには走られまくったのだ。
落差の少ない平坦な流れの肩、瀬尻もたんねんに様子をみながら釣り上がっていくのだが、え、こんなところから、という岸際のほとんど流れのない浅瀬から数匹の魚が一気に走っていく光景を何度も見た。そういうところにいるイワナはたとえフライを流しても追ってはくれない。しっかり流れの効いている筋を攻めたほうが釣りは圧倒的に楽なのだ。
そしてファーストランディングとなったのはやはり入渓から小1時間たったころだった。
ここのイワナも当然ながらだが、体色はやさしい色合いで白点が大きめだ。目もパッチリとかわいい気がする。
これまでほとんど反応のなかった落ち込み脇のラフな水面からも出てきた。
いいサイズだ。めずらしく白点がとても細かい、かといって関東で釣れるニッコウイワナとはやっぱりちょっと違う。地域、川によるこうした魚体の変化がイワナの魅力だ。
このイワナは2日目の沢で釣れたイワナに近い、このくらいのサイズまではまだ環境による体色の変化は顕著にはあらわれないようだ。成長するにつれて個体差が明確になってくるのだろう。
手前の滑床の開きで1匹やらかしたあと右の岩盤を上っていった。表面は茶色っぽい苔に覆われていてざらッとした手触りなのだがどうもすでに腐っているらしく岩盤との接地面はけっこうズルっと滑る。両手を岩盤に置いて慎重にはい上がった。立ち上がって先の流れを眺めていたその時、右足がズルっときてまるで柔道で足を跳ね上げられたように右の体側から岩盤に叩きつけられた。
柔道の受け身をとるように右の手首あたりで岩をたたいたようで、しばらくは手の先から肩にかけてジンジンと痺れるような痛みがあった。幸い頭を打ったり骨に損傷を受けたりなど大事にはならずにすんだ。しかしびっくりした、それほど傾斜のある場所に立っていたわけじゃないので最初は滑って転んだとさえ思えずそれこそ何者かに投げ飛ばされたような心持ちだった。岩盤に腰を下ろして動悸の治まるのを待ち、恐るおそる先へ進むことにした。
ここまでで一番の大場所に出た。いかにも大物がいそうで気がはやる。いきなり1投目を後ろの枝に引っ掛けた。アーア、とため息をついたとたんに今度はサーっと雨が落ちてきた。ありゃーと思う間もなく雨粒は大きくなりあっという間に土砂降りに。踏んだり蹴ったりとはこのことだな、とうらめしく空を見上げる。空は明るいのでとりあえず雨が治まるのを待つ。
待っている間、川を見つめているとなんと大きな魚影が浮かび上がってきている。それも1匹じゃない一番下から上の落ち込みに近い流れまで岩盤沿いの流れに尺クラスが少なくとも3匹、さらに手前のたるみにも大小数匹はいるようだ。引っかかったままにしていたフライをいそいで回収する。しかしモワッと高まった湿度で眼鏡が曇る。雨は少し弱まってきたが川を覆う樹木から落ちる雨粒はまだまだ大粒で激しく水面に叩きつけている。まだしばらく様子見か。
ようやく雨粒が小さくなり水面が落ち着いてきたタイミングでキャストを開始する。後ろに引っ掛けないよう腰を落としてロッドを振った。最初のキャストはショート、岩盤際の流れに届かない。ラインを伸ばして再びキャスト、今度は届いたが手前との流速の差でドラグがかかる。不自然なドリフトは見せたくないがなかなかうまく決まってくれない。やっとうまく流れに乗ると最下流にいたイワナがふっと浮いてきてフライをむかえたが直前で見切った。
なに、見切るのかー、きれいに流しさえすれば1発で食うかと思ったが甘くない。少し上流にねらいを移す。岩盤際と脇の緩流部の間に落ちたフライを緩流部から出てきたイワナが追いかけて飲み込んだ、ように見えたのだがフライは宙を舞い、イワナはパニックになったように上流へ走った。
雨も上がったのでここでおにぎり休憩をとることにした。20分ほど水面を見つめながらおにぎりを食べタバコを吸ったがイワナたちはもう浮いてはこなかった。フライを替えたりもしてみたが空しく流れるだけだった。あきらめて上流に向かう。2枚上の写真に写っている大岩の向こうでたぶん22~3㎝のイワナをかけたが寄せる途中でフックアウト、ついてないときはこんなものか。
大物イワナのツキには見放されたがそのあとも何匹かの魚に遊んでもらった。最後に釣れたのはここにもいるんだ、というヤマメだった。この日、やまゆきかわゆきさんはお休みのためすぐ近くの別のペンションに宿をとった。
最終日、起きると昨日の転倒で打った右腕の手首と肩に鈍い痛みがあった。食事をするにも苦労する、というほどではないがロッドを振ったら痛いかもしれない、というくらいの痛み。また、ニュースでは前夜から北陸、山形の豪雨の報道が続いていた。朝のニュースでは福島の裏磐梯や喜多方あたりまで被害が広がっているようだった。会津は大雨からは免れていたが予報では午前中から雨マークになっている。今日は釣りはしないで早帰りとするかと半分あきらめかけた。
朝食をいただきながらペンションの奥さんとおしゃべりをしているうちに腕の痛みは和らいできて、窓から見える空も雲が切れて青空が広がってきた。ウーン、やっぱり午前中2~3時間だけロッドを振るか。
初日に入った川の中流部、えん堤とえん堤にはさまれたごく短い区間に入渓。フラットな瀬が続く流れの曲流部にあらわれる数か所の淵をピンポイントでねらう。最下流のえん堤上の淵でさっそく8寸ほどのイワナを見つけたが向こうもこちらを見つけたようですぐに逃げられてしまった。
そしていきなり大粒の雨が落ちてくる。この雨は断続的に3~4回降っては止むをくり返した。カッパを羽織って釣りを続けたが蒸し暑くて集中できない。心配だった腕の痛みはほとんど気にならなかった。負担にならない程度に動かしたほうがリハビリになるんだ、と都合よく理解する。
岩盤際の浅い淵の開きで頭を出してフライをくわえたのはなかなかのサイズだった。上流に向かってぐんぐん上ったあと今度は下流に走る。腰を落としてダッシュを止めたがチャラ瀬の流れが思いのほかに強くて寄ってこない。重い引きの相手はパーマークがはっきり見えて幅広のヤマメだった。自分が下流に回り込んでネットを出せばよかったのを横着してヤマメを上流側に引っ張り上げようとしたところでフックアウト。アー、いいヤマメだったのに。
もう1匹やらかしたあと、上のえん堤が近づいてきたところでさらにやらかしを重ねた。雨は上がってカッパは脱いでいたがどうもやっぱりテンポに乗れない。
そしてえん堤に最後の望みをかける。中心部から扇状に広がるめぼしい筋を流してみるが反応なし。右側の巻きをねらう。
反転流に乗って流れるフライにふっと魚影が浮いてきて吸い込んだ。
左の巻きは魚影が浮いてくることなくフライが消えてこれがラストフィッシュとなった。
4日目は1時間半ほどの実釣で3バラシがなんとも痛かったものの、最後のえん堤で2キャッチとなんとかしめくくれたのが幸いだった。退渓点まで歩きはじめるといよいよ本格的な雨が落ちてきた。
会津の渓、決してたくさん釣れるわけでも大物がかかるわけでもないが、渓と渓魚の美しさはいつもながらの素晴らしさだった。今回もいくつもの記憶に残る出会いを心に刻んだ釣り旅だった。

にほんブログ村
Posted by wind knot at 10:05│Comments(0)
│フライフィッシング