2018年06月15日
梅雨の合間に
梅雨入りしたと思ったらすぐに台風が発生したりして、今年の梅雨はけっこう雨が降りそうだなと思った。もちろん梅雨なのだから雨が降るのは当たり前ということだ。ところが今週はうまい具合に梅雨の中休みと自分の休みが重なってくれた。こりゃあもういくしかないだろうと火曜日から3日間を上野村で過ごしてきた。
もっとも台風の影響で月曜までは雨が続いていた。台風が去った火曜日もまだ大気の状態が不安定で午後には一時的な雨が落ちてくる予報ではあった。今回は高速道路で下仁田まで来てトンネルを抜けて上野村に入った。道中はまだ雨が残っていてトンネルへ向かって標高を上げていくとあたりは濃い霧に覆われてきて、なんとなく先行き不安な気持になった。
だがトンネルを抜けると快晴とまではいかないが青空が広がっていた。山ひとつ越えただけで天気がこんなに違うものかとあらためて思った。1日目はとりあえず役場前のC&R区に向かう。
水は平水といったところか、にごりはない。浮いている魚はほとんど見えないが、流心の向こう側の反転流付近で散発的なライズがあるようだった。さらによく見ているとこちら側の反転流でもパシャッと飛まつがあがったりする。
上野村では今週末に鮎の解禁を迎える。早いもので今年の渓流シーズンもすでに前半を過ぎようとしているのだ。当然C&R区のヤマメたちはすでにスレスレの状態で散発的に起きるライズなんてものはほとんど気休めにもならないのだが、まあまったく沈黙しているよりはましだった。
最初のヒットは岸よりの反転流の頭、浅瀬に置かれた石と石の間にいた。朝のうちまだ半分ねむっているのかこういうところでボーッとしているヤマメがよくいる。ぽとんと落ちたフライに思わず飛びついてしまうようで、フライなど徹底的に無視するような用心深いヤマメとは思えない行動をするところがまったく面白い。
午前中になんとか数匹のヤマメを釣ったあとパタリと反応が止まってしまったので支流の様子を見に行ってみた。
しかしこの沢は水も渇水気味で反応は薄かった。たまにピシャッとあがる飛まつの相手はかなりの小型と見えた。1匹だけ釣れたイワナも15cmに満たないようなチビだった。
いつの間にか空を雲が覆いポツポツと落ちてくるものもあったので、この沢には早々に見切りをつけて役場前に戻ることにしたが、降り始めた雨があっという間に土砂降りになってしまった。役場前に戻ってもとても車からは出られないような滝のような雨だった。雨雲レーダーを見ると北東にかなり広範囲にわたって真っ赤な雨雲群が広がっていた。上野村はその雨雲群の南端にあった。一時間ほど車の中で雨宿りをして雨雲が去ったのでまたロッドを振ってみた。
水量はそれほど増えているようには見えず、1匹釣れてほっとしたが、見る間に濁りが強くなってしまった。とても釣りにはなりそうもなかったので、やまびこ荘の温泉に寄ってから、まほーばの森のキャンプ場に向かった。
高台にあるキャンプ場からは上野村の道の駅あたりが見下ろせるのだが夕方になって霧が出て谷間の村は霧に沈んで見えなくなった。キャンプ場も一時は霧に包まれたがさいわい雨になるようなこともなく夜になって霧も去ってくれた。
今回も貸切のキャンプ場かと思ったが先客が一組あったのでそのテントとは離れた区画にスクリーンテントを張った。雨さえ降らなければスクリーンテントとコットの組み合わせはシンプルでいい。
この向こうは急な斜面になってそのはるか下方に道の駅あたりが見下ろせる。
2日目は朝4時ごろに鳥のさえずりに目を覚ました。鳥の声を楽しむには空が白み始めるころが一番というが、まさにその通りで何種類もの鳥たちがいっせいに競うような声をあげる。コットの上でしばらくまどろみながら鳥たちのコーラスを楽しんだ。
朝食をとったあとまた役場前に行った。昨日のにごりはすでに取れていたが、魚たちはあまりご機嫌よろしくなく2度ほどあったバイトはいずれもすっぽ抜けてしまった。
この日は本谷だ。ことしは中ノ沢には2度来たが本谷は初めてだ。
予約した区間は3番、2段のえん堤下からスタートする。
スタート早々、一投目でヒット。本命はえん堤下、両サイドの巻きだがこのヤマメは真ん中で食ってきた。とりあえず距離感をたしかめるくらいのつもりのキャストだったからねらいも何もないのだが、運がよかったか、魚のヤル気が高いのか。
真ん中の流れでフライを見切られたりすっぽ抜けたりと魚とのやり取りを楽しんだ後、本命の左の巻きをねらう。
まずは手前の湾になったところにフライを落とすとすぐにフライが吸いこまれた。
惜しくも泣き尺のイワナ、尾びれが大きくよく太っていた。
少しずつ奥へとねらいを変えていく。青く繁った草の下でバシャっときた。
今度はヤマメだった。これもいいサイズだ。
最後は奥の反転流、えん堤の壁側ではなく手前の岸側にいた。ちょっとやせていたが尺を越えるイワナだ。
次はえん堤の右側を攻める。
はしごの脇にある岩のまわりに数匹の魚が泳いでいる。
岩の手前でヤマメ。
岩の奥で何度かフライに反応しながら口を開くまではいたらなかったイワナが4度目ぐらいのキャストでやっとフライをくわえた。プロポーションのいいきれいな魚だった。ここのイワナは成長するとどれも体色が茶色く白点が薄くなるようだが、このイワナはまだ白点も朱点も残していた。
このえん堤だけでパラダイスのような時間を楽しむことができたが、そんなにいい時間ばかりが続くわけはなかった。上の大えん堤下にいる魚たちはフライを徹底的に無視してくれた。いないのか沈んでいてドライフライには反応しないのかと思ったが左手の岩に登って下をみると、いるいる良型が何匹と浮いていたが、ここに立ってねらうフライマンが多いのだろう、スレ切っていてフライなんぞにだまされないからね、という顔をしている。
えん堤をあきらめて上に上がったが、苦戦が続いた。水は少なめで長いトロ瀬にいるヤマメはラインの気配を感じただけで走っていった。まるで1日分のチケットはもう使い切ったでしょといわれたような気分だった。おまけに3番の区間全体に底石が白っぽい綿のような気持の悪い藻類で覆われて釣りにくかった。帰ってから調べたところどうやら「ミズワタクチビルケイソウ」という外来の珪藻らしかった。
やっとかかったチビヤマメを流れに戻して管理棟で休憩することにした。
管理棟では東京から来たというフライマンと少し話をした。4番に入ったがドライフライのボックスをどこかで落としてしまい仕方なくニンフで釣ったがあまり釣れなかった、といっていた。
午後はどこへ入ろうかと考えたが、先ほどのフライマンは上流へ向かったようなので下流の6番あたりがいいかと歩き始めた。もうひとり5番に入ったはずの人がいるはずだがどこへいったのか、と思っていたら6番の途中でそのフライマンを見つけた。5番をやって4番には先行者がいるので空いていた6番に入りなおしたらしい。
それではしょうがないと、きびすを返して4番に向かった。さきほどの人はニンフでやって釣れなかったといっていたからなんとかなるだろうと思った。
4番は落差のある流れが連続して落ち込み脇の反転流も多く、3番の平瀬よりも釣りやすかった。
イワナが出そうな反転流からもヤマメが飛び出す。
小さな反転流などのポイントはニンフではねらいにくかったのだろうか、そこそこに反応が得られた。
日陰が多く涼しかったが頭上の緑が水面に反射してフライが見にくかった。アップで流すとほとんどフライが視認できない。
フライが見えないままバシャっと来たのにあわせて釣った。けっきょく4番ではヤマメばかり5匹の釣果だった。この日は「しおじの湯」で汗を流してキャンプ場に戻った。
最終日は中ノ沢だが、例によってその前に役場前に寄った。手早くテントを撤収して山から降りた。天気は快晴だが放射冷却のせいか少しばかり肌寒い。
役場前のプールのヤマメがスレまくっているのは分かっているので、下流の瀬を試してみることにした。瀬の中にも魚はもちろんいるだろうが出るのは対岸の緩流部だろうと思った。
ねらった緩流部のおしりのほうでヤマメが鼻面を突き出した。朝のやわらかい光のせいもあるだろうが完璧に美しいヤマメだった。傷ひとつない滑らかな肌にとがった鼻先、サイズも9寸アップで申し分なかった。今回の釣行ではきれいなヤマメが釣れることが多かった。年越しの魚が多いのか放流魚が回復しているのかはわからないが、きれいなヤマメが釣れることはとにかく釣りをしていいて気持がよかった。
対岸の緩流部ばかりをねらって1時間弱のあいだに4匹の良型が釣れた。朝からすごく得をしたようで笑みが漏れる気がしたが、まさかここでチケットを使い切ったなんてことはないよな、という不安も一瞬頭をかすめた。
中ノ沢は最下流部のG区に入る。昨年ここに入ったときは下のえん堤の工事の最中だったがそれはもう終わっていた。えん堤上の流れは平凡な平瀬だったが、わずかな深みに魚影が見えた。
フライを見たとたんに走られて終わるかと思ったが、丸い柱の前にいたヤマメが律儀にもフライをくわえてくれた。

そのひとつ上の流れ、沈み石の前に定位していたヤマメ。どうもあまりに平凡な流れなので見過ごされていたのだろうか。
さらにもう1匹を追加した。どうも初っ端からできすぎな感じがしないでもない。
入渓してすぐの流れで3匹のヤマメを釣って釣りあがろうというところでやたらと腹が減ってしょうがなくなった。朝飯を食ったのは4時半ごろだ。それからキャンプを撤収して役場前でロッドを振り、中ノ沢に来た。時間はそろそろ9時半というところだが、朝飯からはすでに5時間ほどが経っていて腹が減ってもおかしくはない。いきなり3匹のヤマメを釣って気持にも余裕があるので車に戻って早い昼食を摂ることにした。
カップヌードルをすすって腹を満たしふたたび川に立った。
どうもあまり芳しくない。車に戻らずあのまま釣りあがるべきだったかと後悔したが今さらだ。実は今回の釣行、もともと1泊2日の予定で家を出てきた。2日目があまりにいい天気で気持がよく、「天気がいいのでもう1泊して帰る。」とカミサンに電話をしたのだった。「ハァー~?」という返事に「じゃね、よろしく!」と電話を切ったがさすがに今日は早めに帰らないと後が怖い。釣りは午前中いっぱいで切り上げることにしていたのでなんとかあと1、2匹は釣っておきたかった。
対岸の岩に絞られた流れが沈み石にぶつかって今度は開いていく流れのちょうど沈み石のあたりに木漏れ日がスポットライトを当てていた。スポットライトの少し前でヤマメがフライを迎え撃った。
大きくはないがヒレピンだ。
日向の陽光がまぶしすぎて日陰に入ると目が追いついていかない。黒い水面に映る木漏れ日とのコントラストが強烈だった。フライが見えるようになるまでしばらくかかるがその間に魚を散らせているような気がした。
かなり荒れたぶっつけの影から大物が飛び出したがフライは口に入らなかった。何度かキャストを繰り返したが2度目はなかった。かなりのサイズに思えて悔しかったがあきらめて先へ進んだ。
左の大岩をすぎた流れが白く頭を出した石にぶつかる。フライを流せる距離は限られていて水深もないので期待はしていなかった。フライが流れに乗って思ったよりゆっくりと下ってくる。手前の石の直前に茶色い魚影がフワッと浮かんできてそのままフライを飲み込んだ。
35cmのイワナだった。長さは立派だったがやせていて頭と尻尾ばかりがやたらとでかかった。このイワナを釣ってしばらくいくともうG区の終点だった。時間はまだ11時半で区間フリーとなる1時まではだいぶ間がある。もとより午前中までとしていたのでここで退渓することにした。
車に戻る途中、川を覗くと大イワナを釣ったポイントが見えた。上から見るとそんなに大物が潜んでいそうなところには見えなかった。大岩の影が良さそうにも見えるがここは浅すぎて落ち着かないのだろう。石の前に忽然と姿を現したイワナがフライを飲み込むシーンはまさにドライフライフィッシングならではのエキサイティングな瞬間だった。
3日間の釣行は初日こそゲリラ豪雨に見舞われたがあとは快晴で気持ちよく釣りができた。来週なかばは雨マークが続いているので釣りはお預けになりそうだ。今シーズンの後半戦は今月末からのスタートか。

にほんブログ村
Posted by wind knot at 21:59│Comments(0)
│フライフィッシング