2023年02月26日
解禁の戦略2
前回の投稿で解禁の戦略などと大げさなことを書いてしまったが、なんのことはない、3月から4月にかけてカワゲラやユスリカのハッチが盛んな川でならだれもがやっているようなことで、戦略などというような大そうな話ではなかった。
それなのにまたしても戦略というタイトルを掲げるのはまったくもっていかがなものか、とは思うのだが性懲りもなくちょっとばかり考えていることを今回も書いてみたい。
前回の話はだれもがやっているようなこと、であって、だれもがやるようなことというのはつまりそのやり方で釣れるからということだろう。いってみれば春の釣りのセオリーみたいなものなのだ。私なんぞはセオリーなんていっていても、いざ現場に立つとあたふたして本来やるべきことをすっ飛ばして、まるで違うことを始めたりするので、自分自身の解禁の釣りを整理するようなつもりで書いたようなものだった。
今回の話はすこし違って、こんなことをする人はあまりいないんじゃないかな、というようなことだ。なにをやろうと考えているかというと、簡単にいえば見えないフライで主に水面直下のライズを攻略するということ。
なんだソフトハックルの釣りだろ?と言われるのはフライフィッシングのベテランというような方々で今さらなんだよ、と言われそうだがソフトハックルの釣りをやろうというわけではない。ソフトハックルの釣りというとまず頭に浮かぶのはダウンアンドアクロスで流れにフライを横切らせてゴンとくるあたりをさそうというやりかたではないかと思う。私もこの釣り方を試みたこともあるが、やりたいのはドライフライの釣りと同じようにアップクロスで投げてフライをナチュラルドリフトさせるやりかた。
ソフトハックルだってアップで投げてふつうに釣れるよ、という方も当然いるとは思うが、私はこのやり方では釣れたためしがない。だいたい、フライがどこを流れているのか見えない状態でライズをねらうなんていうのはとてつもなく難しい釣りで私の腕ではお手上げといっていい。
そもそも、なぜこんなことをいっているかというと解禁直後、いい感じでライズもあって順調に釣れていたのがパタッと釣れなくなる時がある。ライズはまだ続いているのに魚たちがフライを見切るようになるシーン。これは解禁直後だけじゃなくて3月下旬から4月にかけては、すでにスレッカラシとなったヤマメたちが日常的に見せるシーンでもある。こういうとき、なすすべもなく空しくキャストをくり返すだけではなくて何とかしたい。そのための戦略を考えていたわけなのだ。
神流川ヴィラ裏、野栗沢出会い上流のプール。いつもたくさんのヤマメたちが悠々とライズをくり返しているがフライなどまったく相手にしてもらえない。
いままで水面で釣れていたのが、まったく釣れなくなるとき、沈めれば釣れる、ならことは簡単なのだが沈めても釣れないことのほうが多い。
しかし、いままでだって水面上を流れていく虫がはっきり見えていたわけじゃない。流れていたのがごく小さくて、あるいはサーフェスフィルムにぶら下がっていて目には見えなかったのか?見えていた虫が見えなくなったのなら流下物が変わったといえるだろうが、そうでないなら流下物が変わったわけではないのかもしれない。
ライズは続いているのに釣れなくなる理由は流下物が変わったと考えるのが普通だから、フライのパターンを変える、サイズを変える、カラーを変える、ひととおり考えられることは試したが釣れない→お手上げ、なのだがフライのパターンやサイズとは別に水面への絡み方ということで試してみたいことがあるのだ。
ライズはあるのだから水面から水面下数センチのところを流れているものを食っていることは間違いない。際であるサーフェスフィルムにぶら下がっているならボディは水面下にあってインジケーターだけ水面上に浮かんでいるフライに反応してくるはず。さっきまではこいつに出てくれていたのだ。
でも、このフライでは釣れない。もしも流下物は変わっていないのに釣れなくなったのならヤマメがこのタイプのフライに違和感を感じるようになったということだろう。魚にとっての違和感を、釣り人目線ではスレちゃったの一言ですませてしまう。「何がいやなんですか?」と魚に聞いてみるしかないのだが、違和感を与える一番の要素はティペットの存在だと思っている。だが、ティペットもぎりぎりまで細くしてある。ティペットを見せないようにフライ先行のドリフトも100%とはいわないがそこそこ成立はしている。でもダメ、となるとあと残るのは、そう水面に屹立しているインジケーターの存在だ。
ふつうは水面上に立ち上がっているインジケーターのことをヤマメは意外に気にしないものだと思っているのだが、すれてくるとやはりこいつは気になるのかもしれない。
インジケーターというけれどこれは目印としての機能とともにフライを水面直下にぶら下げるためのフローターの役割もしている。このフライからインジケーターを取ってしまったらニンフになってしまう。見えないし、サーフェスフィルムにぶら下がるという機能も失ってしまうのだ。
そこで考えたのがこのフライ、インジケーターをオレンジのHDWから黒のADWに変えて長さも5mmほどとごく短くしてみた。その代わりにソラックスの2か所に分けて取り付けることでよりエアを蓄えやすくして浮力を確保できるのではないかと期待している。視認性のほうはよほど無風の状態で水面の反射もなくてという理想的な状況ならなんとか見えるかもしれないが難しいだろうとは思う。
左からS(ADW1束)、M(ADW2束)
視認性はは別建てで考えた方が良さそうなのでごく少量のADW1束分を使ったSサイズのインジケーターを併用するつもりだ。しかしこれだとほとんど重量のない2本のドライフライを投げるようなもので投射性には疑問が残る。また仮にうまく投げられたとしてもフライが沈むわけではないのでインジケーターが立ち上がらない可能性が高い。まあ、別に立ち上がってくれなくても見えていればいいのだが気持ち的にはすっきりしないかもしれない。
インジケーターの2案目。発泡ウレタンのストライクディテクターを5mm✕15mmほど切り出してティペットに巻き付けグイグイ揉んで1mmぐらいまで細くしてしまう。スレッカラシのヤマメ相手にできるだけローインパクトなキャストをしたい。フライ自体はノーウエイトなのでインジケーターに浮力はいらない。視認性はこれもあまり期待できないがフロータントを塗っておけば表面張力で水面には乗ってくれるのではないかと思う。
一番の問題は見えないフライがねらったスポットに入っているかどうかだから、かろうじてでもインジケーターが見えていれば釣りとしては成立してくれるはずだ。発泡ウレタンの発泡部分をつぶしてしまう手法はヤーンインジケーターのストッパーとして思いついたのだが、フライの位置を確認するためのマーカーとしても使いようがありそうな気がする。
で、これが成立するならフライのステージを変えてこれまで取れなかったライズをなんとかする可能性も見えてくる。水面下10cmぐらいまでならノーウエイトのカワゲラニンフ、ユスリカピューパでOKだろうし、サーフェスフィルムを挟んだステージなら
カワゲラフローティングニンフと同様にユスリカもある。
カワゲラ、ユスリカともに羽化したてのアダルトを水面上であるいは水面下数cmでナチュラルドリフトさせる釣りはフライにインジケーターをつけないことでヤマメの警戒心を和らげる効果に期待したい。ノーウエイトのユスリカピューパと小さなインジケーターの組み合わせは実は前にも試したことはあるのだが、本格的にやってみようというのは今回が初めてだ。
とはいえ、すべて机上の空論といってしまえばそれまでのこと。これまでに何度の空論を膨らませてはフィールドで打ちのめされてきたか。シーズン中なら空論が膨らみすぎるほど机上にいるわけでもないが、オフの間は膨らむ膨らむ。他の釣りのことはわからないがフライフィッシングにおいてはこの空論こそが楽しみの一つであることは間違いない。
サラリーマン時代、これぞ、という提案を空論だとボロクソにいわれた上司の顔は二度と見たくなかったが、フライフィッシングの空論はいくら相手にされなくてもヤマメの顔はまたすぐに見たくなる。この空論いや戦略でスレッカラシヤマメを見事にしとめてみせる、甘美な夢でも見て解禁までの数日をすごすとするかぁ。
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Posted by wind knot at 21:15│Comments(0)
│フライフィッシング