2017年08月27日
ヤマトのち、発熱

お盆明けの釣行を東北に行こうか信州かと迷っていた。だが東北地方は今年の不安定な天候に翻弄されて雨が降り続いていた。釣友のカチーフさんも里帰り釣行では雨に悩まされたという。一方の信州は断続的な雨は降っているようだがずっと降りっぱなしということではなく、河川はやや増水というくらいの状況らしかった。
よし、信州へ行こうと決めた。ひと月前の釣行では雨のため行けなかった王滝川支流を探ってから開田高原に向かうという計画を立てた。開田高原は初めてだが、穏やかな流れがたくさんあってのんびり釣るにはかっこうのロケーションと期待した。
8月21日月曜の早朝、家を発った。薄っすらと明るくなってきた空は灰色の雲が覆い、ときおりパラパラと落ちてくる雨がフロントグラスを塗らした。また雨かと気持が沈むが中央道を走り続けるうち、雲は厚くなったり薄くなったりを繰り返しながらもだんだんと明るい区間が長くなってくる。伊那ICを降り権兵衛トンネルを抜け木曽に着いたころには空は青く澄み渡っていた。途中のコンビニで2日分の入漁券を購入し川へと走る。
林道の分岐に車を止め、釣りの装備とテントやシュラフを詰め込んですっかり重くなった50Lのザックを背負い1時間半ほど歩いた。
前週の半ばにグキッとやった腰がまだ重く、歩けるか不安だったがなんとか目的地に着いた。
まずはテントを組み立ててほっと一息、コンビニオニギリを腹に詰め込んでさっそく渓に立った。車から眺めることができた王滝川本流は流れも落ち着いていて不安はなかったが、たどりついた渓も水はほぼ平水のグッドコンディションだった。
相変わらずの美しい流れだった。ここまで来たからといって爆釣が望めるほど魚影の濃い川ではない。大物に出会ったこともないのだがそれでも数年に一度はこの川を訪れたくなるのはこの水と釣れるイワナの美しさの故だ。
さっそく向かえてくれたイワナ、大きくはないがやはり美しい。南アルプスの野呂川の野生的なヤマトとはまた違った儚げな美しさがこの谷のヤマトイワナの身上だ。
フライは#12のテレストリアルとメイフライイマージャーを使った。魚のサイズからするともっと小さいフライのほうがよさそうだが#12くらいのフライはやはりすごく見やすい。こればかりは人間の都合優先だが、それでもイワナたちは果敢にフライにアタックしてくれた。
大きな木が倒れていた。自然の過酷さとその迫力に圧倒される。
釣れるイワナは相変わらずのサイズだがなんとかツ抜けを果たしたところでこの日は川から上がることにした。
この日は2度プーさんの大きな落し物(プーさんの大きな縫いぐるみが落ちていたという意味ではない)を見かけたのでBOSEのスピーカーをガンガン鳴らしながら夕食をとった。このスピーカーと2枚目の写真でテントと一緒に写っているチェアが荷物を重くするのに大いに貢献してくれたが二つとも持ってきてよかったと思う。腰痛持ちなので地べたに腰を下ろしていると腰に負担がかかってただでさえしんどくなる。今回はこのイスのおかげでかなり腰への負担は軽減されたと思う。WILD-1のオリジナル品で今回がアウトドアデビュー。背負って持ち歩くにはギリギリの重さか、だからといって毎回の釣行にこれを背負って行こうとは思わないが。
夕食はセブンイレブンのポテサラとパスタを茹でてナポリタンのソースをあえた。そして川で冷やしておいた缶ビールでひとり乾杯。BGMは川の音といきたいところだがひとりだと恐ろしいのでBOSEでクラプトンを流した。フラスコに入れてきたウイスキーを川の水で割って飲んだ。8月下旬、山の夕暮れは早い。フラスコのウイスキーが残り少なくなるころあたりはすっかり闇に包まれていた。
翌朝、空は薄曇り。朝食はフリーズドライのチキンライスだ。熱湯を注いで15分待つというやつだが、こういういわゆる山行食は初めて食べてみた。軽いしお湯を入れるだけとかんたんでいいがお味のほうは・・・私としてはパスタのほうが断然うまいと感じた。
そして2日目の釣り。
前日と同じような感じでポツポツとヤマトイワナを釣った。
ロッドは前日がアスキス762、この日はBlue Heron Super Fine を使った。ともに7'6" #2-3 だ。ラインは#3 でリーダーは5X 12ft、に6X のティペットを5ft ほど足して全長17ft ほど。開けた区間が多いのでこの長さのリーダーでもストレスなく振ることができた。2本とも20㎝に満たないイワナでもしっかり曲がってくれるのが楽しい。値段はアスキス1本でBlue Heron が3本近くは買えそうだからコストパフォーマンスからいうとBlue Heron が圧倒的に有利だ。ただしアスキスというロッドはそもそもコスパなんていう概念は持ち合わせていないロッドだからいうだけ野暮な話だが。
こんな岩盤の流れにも魚が着いている。この渓のイワナたちの体色は底石の白さに依拠していると思われるが、底石が白いといくら色白のイワナでも姿がよく見える。今回の釣行でも何回かはサイトでねらうことができた。ブラインドで流したフライに忽然と渓魚が飛び出すのが日本の渓流フライフィッシングの醍醐味だと思うが、数少ないサイトフィッシングのチャンスでヒットを得たときの喜びはまたひとしおだった。
2日目は7時ごろから釣りはじめて10時半で退渓。テントを撤収してまた思いザックを背負い林道を下った。
2日目、3日目は開田高原のペンションJ-HOUSEさんに投宿。時間もまだ早いのでどこかで竿を出そうかとも思ったが疲れたのでそのまま宿に入った。その晩からまた降り始めた雨は明け方まで断続的に降り続けていたようだった。
翌朝おきるとなんだか体がだるくのどが痛かった。風邪をひいたかと思ったが天気は回復していたので川へ向かった。前日ここに来る途中たちよったカフェ花猿亭さんでマスターから聞いていた末川下流部の入渓ポイント。どこも必ず人が入っているはずだと聞いたが、行ってみると誰もいなかった。しめしめとほくそ笑みながら川に降りてみたがやはり昨夜の雨で増水しているらしく水勢が強い。そろりそろりと遡行していくことはできるが腿まで水深があるところなどは足をとられそうで恐ろしい。
なにより流れが速いのでとてもフライに魚が出るような状態でないこともわかり、そうそうに上がることにした。少し上流に移動し水深が浅くなったところを見つけたのでふたたび降りてみた。
上流に向かって大きく右にカーブする流れで川原もあって瀬尻、川原側のシャロー、流芯脇、右岸のぶっつけなどポイントは多いもののどこを流しても反応のかけらもなかった。
その先もフラットな浅い流れが続いていたが釣れる気がしなくてさらに大きく上流に移ることにした。
このあたりはいかにも渓流らしいフリーストーンの流れで意外なことに増水しているようには見えなかった。遡行するにはまったく問題のない流れだった。気をよくして釣りあがっていくとさすがに下流部と違って魚の反応がある、しかしどれも極小の魚でフライをくわえられないようだった。そしてこのころから急カーブを描いて体調が悪化してきた。水に使っている足元はウエーダーをはいているにもかかわらず妙に冷えて冷たくなり、反対に頭は熱をもって汗が流れ落ちてくる。ちょっと川を進むだけで息が切れ、おまけに腰も痛くなってきた。
たまらず川原に座り込んでペットボトルのお茶をあおった。少し休んで落ち着いたのでそろそろと立ち上がってロッドを振るとやっと待ちかねた1匹がきた。
待ちかねた1匹がこのサイズでは泣きたくなるが、いつものとおりボウズよりはずっとましだと心に言い聞かせる。目の先には気持のいい流れが続いていたが、もうこれより先に進む気力も体力もなくなっていた。
重い足を引きずるようにして車にもどり宿にとって帰す。途中で何軒もあるそば処の1軒によりそばをたぐりこんだ。このころはまだ食欲もあるだけましだったのだ。店の入り口にあった自販機でスポーツドリンクを3本買って宿にもどるとベッドに倒れこんだ。
その夜はせっかくの食事もほとんどのどを通らず、ご主人にいただいたバファリンを飲んで寝た。一晩中、浅い眠りとシャツを濡らす汗の不快さに目を覚ますことを繰り返した。
翌朝はまだ熱っぽさはあるものの朝食は無理やり腹に押し込むようにしながらなんとか食べることができるようになっていた。もちろん釣りができる状態でもなく、そうそうに宿をお暇して帰路についた。
風邪かな?と思ってから発熱までの時間が短く驚いたが川で座り込んだときは熱中症のような状態だったのかも知れない。もとより腰痛を抱えながら重いバックパックを背負っての初日と2日目の釣行で体力を消耗していたことが原因だとは思う。帰ってからカミサンに「家も帰りみず遊んでばかりいるからばちが当たった。」と言われたがかえす言葉もない。
このブログをご覧の中高年の釣人のみなさんも夏の疲れがたまる今日この頃、無理な釣行計画の強行は慎んで安全に釣りを楽しんでいただきたいと思う。最初の源流テント釣行の際に今回のような急な体長悪化に襲われていたらと思うと本当にぞっとする。

にほんブログ村
Posted by wind knot at 16:46│Comments(6)
│フライフィッシング
この記事へのコメント
東北ではなく信州に行かれて正解でしたね。渓の様子を画像で拝見しただけでヨダレが出そうです。イワナもきれい。ロッドの曲がりが目に浮かぶようです。イワナって目がかわいいですよね(笑)。
熱中症ですか?危ない危ない。気を付けて。
もっとも東北だったら逆に寒くて夜は辛かったと思います。夏休み、帰省中の森岡は最低気温17度ほどでしたから(驚)。
熱中症ですか?危ない危ない。気を付けて。
もっとも東北だったら逆に寒くて夜は辛かったと思います。夏休み、帰省中の森岡は最低気温17度ほどでしたから(驚)。
Posted by カチーフ at 2017年08月27日 17:18
カチーフさん、こんばんは。
東北は今年もたいへんみたいですね。信州も支流を集めた流れになるとやはり増水気味は免れないようでしたが上流部は平水に近かったのだろうと思います。
体調が万全でないときの夏の釣行はほんとにやばいです、気をつけます(笑)
東北は今年もたいへんみたいですね。信州も支流を集めた流れになるとやはり増水気味は免れないようでしたが上流部は平水に近かったのだろうと思います。
体調が万全でないときの夏の釣行はほんとにやばいです、気をつけます(笑)
Posted by wind knot
at 2017年08月27日 20:11

windknotさん、こんばんは。
この水系は訪れたことがありませんが、素晴らしい透明度、明るい渓、きれいなヤマトですね!
いつか行ってみたくなりました。
急な体調不良になったとのこと・・・
ご無事に帰宅できてなによりです。
登山でも、体調不良による遭難や行動不能は意外と多いと聞きます。
僕も気を付けようと思いました。
この水系は訪れたことがありませんが、素晴らしい透明度、明るい渓、きれいなヤマトですね!
いつか行ってみたくなりました。
急な体調不良になったとのこと・・・
ご無事に帰宅できてなによりです。
登山でも、体調不良による遭難や行動不能は意外と多いと聞きます。
僕も気を付けようと思いました。
Posted by しげ at 2017年08月27日 21:29
しげさん、こんばんは。川はいいんですけどねー、カフェのマスターにもペンションのオーナーにも「今が一番釣れない時期」といわれました。それはどこもそうかも。
行動中に体調が悪くなって動けなくなったらやばいですね。そうなったときにどうする?も大事ですが、そうならないように無理はしない、ことが一番ですね。
行動中に体調が悪くなって動けなくなったらやばいですね。そうなったときにどうする?も大事ですが、そうならないように無理はしない、ことが一番ですね。
Posted by wind knot
at 2017年08月27日 22:16

いいですね~!
いつか僕もそんな釣行したいな!
夏の疲れで持病の膵炎が悪化中です!
いつか僕もそんな釣行したいな!
夏の疲れで持病の膵炎が悪化中です!
Posted by アマゴンゾウ
at 2017年08月28日 13:56

アマゴンゾウさん、こんばんは。
定年フライマンなればこその釣行?残念ながら体力がついてこなかった!?
体力があるころは時間がない、時間が自由になるころは体力がない(お金も)。
人生はなかなか厳しいけれどこれにめげずにがんばります。
夏の疲れ・・・やっぱりでますね、お大事に。
定年フライマンなればこその釣行?残念ながら体力がついてこなかった!?
体力があるころは時間がない、時間が自由になるころは体力がない(お金も)。
人生はなかなか厳しいけれどこれにめげずにがんばります。
夏の疲れ・・・やっぱりでますね、お大事に。
Posted by wind knot
at 2017年08月28日 21:59
