裏磐梯遠征の記事をやっとアップできたのが9月19日の夜、記事の作成中も翌日の群馬県シーズン最終日が気になって仕方がない。だが、寄る年波で遠征の疲れがまだ抜けきらず、ブログアップも滞っている情けなさだ。
意を決して晩飯の際にカミさんにあした釣りいってくるわ、と告げると、カミさんはフーンというような顔をしていたが孫娘のあーちゃんに「また行くの?」と突っ込まれた。
ムム、そっちから来たかと一瞬ひるんだが、「ジジの行く川はあしたが釣りができる最後の日なんだよ」と説明すると納得したようなしないような・・・
まあ、とりあえず宣言はしておいた。
もっとも、裏磐梯遠征も思ったような釣果にはめぐまれず、シーズン最終日の関東の釣り場となれば厳しいのはいうまでもない。しかも20日はどうやら今年最後の猛暑日となりそうだという予報。暑さが釣り欲に余計なブレーキをかける。
それでも行かずに後悔するよりは行って後悔するべしと、釣れないのは承知の上で出かけることにした。
入渓ポイントを目指す途中、チラ見した川の下流域は予想以上に水が多かった。このところ関東のあちこちでゲリラ雲が多発していたからこのあたりもけっこう降ったんだなとわかる。下流部の増水ぐあいのままだと釣りはちょっと厳しそうなので、上流はもう少し落ち着いていてくれと祈るような気持ちで運転を続けた。
水量も気になったが、渓流シーズン最終日、先行者の存在も気になる。だが、道々それらしき車もほとんど見かけなかった。そして7時半過ぎに目的地に到着、ここにも車は止まっていなかった。やっぱり人気のない川なんだなと納得。
さっそく川に下りてみると幸いに下流部のような増水はなかった。気温は22℃で半袖のTシャツ1枚ではちょっと肌寒いくらい、水温は計らなかったがたぶん15℃前後だろう。
さあ、最終日だとロッドを振っていると底石の敷き詰められた流れの合わせ目で15㎝ばかりのイワナがパシャっと出た。フッキングはしなかったが早々のコンタクトにホッとする。
その先の落ち込みわきの反転流、張り出した枝の手前でかわいいのがフライを追ったがこれは食べそこない。何度かキャストを繰り返して奥の白泡に浮かんだフライがパシャっと消えて今度はしっかりフッキング。
残念ながら撮影前にぽろっと逃げられてしまったが18㎝ほどのイワナだった。写真は撮れなかったがとりあえずはワンキャッチだ、やっぱり来てよかったと思う。
だがそこからは静かな時間が過ぎていった。7月に尺を釣った大場所もその後は沈黙して今回も気配すらなかった。
10時50分、はやめのランチ休憩をとった。リバーサイドカフェも今日で最後かとしみじみコーヒーを味わった。そう、これを楽しむだけでも後悔なんてないのだった。
カフェを店じまいして、釣りを再開する。走る魚やフライの下でギラっと光る魚影をちらほら見かける。
岸際の緩い流れと流心脇の流れの境い目に乗せたフライが、石の前で手前の流れに引き寄せられるその瞬間、クワッと口を開いた良型が水面に顔を出した。
フライにはすでにドラッグがかかっていて口には入らなかったが、でかかった。ひょっとしたら尺ちかくあったかもと思わせる迫力だった。あきらめきれず何度も流してみたがもちろん2度目はない。
昼近くなったころ、烏帽子型の岩に割かれた流れがふたたび合わさるところでピシャっと飛沫があがった。
今度はしっかり撮影にも成功した。小さいけれどきれいなイワナだ、ありがとう大きくなれよと流れに戻す。
それから1時間以上、また音沙汰のない時間が続いた。一つ目の退渓ポイントが近づいてくる。ああ、さっきのが今シーズンのラストフィッシュだったかなと思いながらあと少しの区間を釣り上がっていく。
下流からアップストリームで上がってきたので大小ふたつの苔むした岩が重なって見えた。その岩の隙間からフライめがけて影が走った。
ヨーッシ、やったぜ、7寸ほどだが小気味よくロッドを曲げてくれるいいイワナだった。最後にきてようやくいいのが出てくれた。もうこれで十分だと思いながら次のポイントにフライを入れる。
瀬脇の流速の境い目、奥の方は反転流になっている。その流れ同士が干渉しあうポイントで上流側から銀色の光が矢のように走った。
これもいいサイズだ。さっきのより少し大きい。しかもこの美しさはどうだ。写真を撮りまくって流れに戻す。ここにきての連発、これだから釣りはやめられない。
そしてその先へ、流心脇の小さな反転流。回っていく流れに乗ろうかどうか迷うように浮かぶフライに上流から黒い影がユラーっとあらわれフライを吸い込んだ。
さらにサイズアップの8寸クラス、思いもしない3連発だ。それにしてもこの腹のふくらみときたら!
いよいよクライマックスとなる滝下の淵。まずは手前左の岩盤際をねらう。
岩に沿ってゆっくりと流れるフライ。水面がかすかに盛り上がったかと見えた瞬間、フライが消えた。来たっと立てたロッドに重みが伝わる。オっ、いいサイズだ、でかいかもしれない。
手前の瀬を落ちてくる黒い姿が見えた。でかい、思ったよりでかい、こいつはでかい、これ以上落としたくない、とロッドをためてこらえた。腰を落としてイワナをネットに迎え入れる。バレないでくれ!
ネットから盛大にはみ出た堂々の魚体、こりゃあ尺あるだろう。メジャーをあてると31㎝弱の尺イワナだった。尺を超えてくると白点が薄くなって無班のようになる個体が多いが、このイワナは白点もはっきりしていて気品のある姿だ。
しばらくのあいだ放心したように横たわるイワナを眺めた。苦戦した遡行だったが、最後の30分あまりで4連発、しかも最後はまさかの尺だ。
行かずに後悔するより行って後悔だって?ふん、最初から行かないという選択肢などなかったくせに。
そうさ、ここに来なけりゃこの感動に出会うことはなかったんだ。
イワナをそっと流れに戻して立ち上がった。時間はまもなく2時をまわるところだった。もう少しやってみるか?いやよそう、シーズンラストフィッシュが尺イワナなんてめったにあることじゃない。この感動はしっかり胸にきざんでおくべきだ。
タバコを1本吸った。斜面を這い上る前にふと振り返り、渓を見渡した。ありがとう、来年またくるから。心の中で自然と頭を下げたような気がした。
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