シーズンオフのお楽しみ、低山ハイキングの第2弾は東上線小川町からの大霧山・定峰峠コース。
コースガイドでは歩程8Km、3時間ほど、大霧山からの眺望がすばらしい本格的なハイキングコースとなっている。人気のコースらしく検索してみると山行記録もたくさん見つかった。
コースの概要は小川町駅→(バス25分)→橋場バス停→(歩50分)→粥新田峠→(歩25分)→大霧山山頂→(歩30分)→旧定峰峠→(歩40分)→定峰峠→(歩35分)→白石バス停→(バス30分)→小川町駅
釣りに行くときはいつも車なので時間のことはほとんど気にしたことがないが、電車とバスを使っての縦走ハイキングとなるとそうはいかない。
なにしろ小川町から乗るバスはなんと午前中に2本しかない。6:46 と 8:20 発だけ、6:46だと早すぎるので実質的には8:20の1本だけということだ。
これに乗り遅れないように7:04志木発の急行電車に乗って7:55に小川町着、駅前のローソンで昼のパンと飲み物などを仕入れてしばらくすると停留所にバスが入ってきた。
ひと目でそれとわかるハイカー4人のグループと熟年ご夫婦、あとは一般の乗客が二人。ハイカーの人たちはいずれも私よりは年上の方々だった。
出発して5分ほどで一般のお客は降りてしまいあとは山歩きのひとだけ。平日とはいえ私を含めた中高年、すでに定年もすぎているだろうからお天気さえよければ曜日は関係ないということだろう。
バスと言えば雨の日に自宅から駅まで乗るくらい(ふだんは自転車)だが山里の風景を眺めながらのんびり揺られるというのもいいものだった。自分で車を運転するとなるとあちこち眺めながらというわけにはいかない。
25分ほどで橋場というバス停に到着した。ここでは私のほかに熟年ご夫婦も降りた。
ご主人に大霧山に行くのですかと尋ねてみると、「そう、もう何回も来ているんだけどね」とのこと。
何回も来るということは、それはよっぽどいいところなんだろうと納得しながら歩き始めた。
橋場バス停
バス停の向かいに延びる坂道を登る。
バス停から道路を渡ると槻川にかかる橋から川が見下ろせるので、つい習性で眺めてしまう。その間にさきほどのご夫婦が先に進んでしまった。
しばらくいったところに立っている看板
「世界一小さな釣堀センター」だそうだが、どんな釣堀なのか?
道路からだいぶ下のほうにあるのでよくわからないが小さな池のようなものが見える。ひょっとしてあれが釣り掘なんだろうか?
ここで写真を撮ったりしているうちに先行していたご夫婦の姿が見えなくなった。少しペースを上げて後を追ったが追いつかない。けっこう早いんだな、と思ったのは間違いで途中で県道をショートカットする山道があるのを見落としていたのだ。
おかげで距離的には2.5倍ほどよけいに歩かされることになってしまった。
南側の丘に芝生のような広場が見えた。ゴルフ場かと思ったが牧場の放牧地だった。
みかんの無人販売所、小ぶりだがうまそうだった。帰り道なら一袋も買っていきたいところだ。
そろそろ舗装道路から登山道へと入っていく道に突き当たるはず、というところで左に下へ降りていく小さな山道があった。ここじゃないよなと通り過ぎたが、ちょっと不安になってもどって行くと私より少し年上と思えるリュックを背負ったご婦人が歩いてきた。
「すいません、大霧山はこの道でいいんですか?」と尋ねてみた。
「そうです。この道をもう少しいくと民家の脇から登る道があるんです。」と教えてくれた。
「私も一人で登るのは始めてなんです。何度か連れてきてもらったことはあるんで間違いはないと思うんだけど、そこの道がちょっとわかりにくいんですよね。」
それじゃそこまでご一緒しましょうと二人で歩き始める。
「下でもう道を間違えて来ました。」というと「あそこもうっかりすると見過ごしちゃうところです。」と笑った。
しばらく歩くと道が大きくカーブするところに指導標があった。その先の民家の脇から登っていく。
ここで道を教えてくれた女性にお礼をいって少し急ぐことにした。
落ち葉が敷き詰められた道を進む。
道が舗装路に変わった。
ふたたび未舗装の登山道に入る。
最初の目標ポイントの粥新田峠まではあと1Kmほどだ。
前方に数人のパーティが見えた。近づくと40~50代のハイカーで女性も一人いたが、なんだかすごくゆっくりしたペースで歩いている。
ザックや服装はいかにもいまどきのいでたちで、アウトドアショップからいま出てきました、というようにカッコイイ。
でも、歩くのは遅い。なにしろ私が追いついてしまうくらい。
私が後から追いついてきたのをリーダーらしき男性が気づいたらしく、道を空けてくれた。お礼をいって歩を早める。
天気予報では昼近くから風が強くなるはずだったが、はたしてだんだん風が強く吹き付けてくるようになってきた。
しかしここからの山道はけっこう急なのぼりが続き強風にもかかわらずすぐに汗がふき出してきた。半そでのTシャツ、長袖のTシャツ、ジャージのジャケット、ゴアテックスのパーカというレイヤードだったが峠に着いたらジャケットは脱いでしまおうと思った。
そしてすぐ粥新田峠に到着。
東屋でザックをおろし、上の2枚を一気に脱いでザックにしまった。
写真を撮ったりトレッキングポールを伸ばしたりしていると先ほどのパーティ、道を教えてくれた女性が相次いで追いついてきた。休憩するのかと思ったらそのまま登山道に入っていった。
熊さんの注意書きも出ていた。
釣りにいくと当たり前に見かける「熊出没注意」だが、ハイキングコースでは意外と見かけないと思っていた。
追いつかれた女性とパーティの後を追う形になったが、トレッキングポールを使うとペースがぐんと上がってすぐに追い越してしまった。
ときおり木立の間から景色を望むことができる。
植林帯の中を快調に登ることができた。もっとも風はますます強くなって、きつい登りでも汗をかく余裕がないくらいだ。
体感的にはかなり寒いはずだが、山道を登っているので上着なしでも寒さは感じない。
傾斜がきつくなってきたと思ったら朝のご夫婦が見えた。やっと追いついた。
この斜面を登りきったところが大霧山の山頂だった。
前回いった大高取山は山頂から景色も望めず肩透かしだったが、ここは西北方向に視界が開けて絶景がひろがっていた。
おまけに予期せぬプレゼント
北側の大地に虹がかかっていた。
全天青空なのだが、局地的に雨が降っていたらしい。
先に着いていたご夫婦と写真を撮りあったりして、私も写真を撮ってもらった。
渓流釣りだと絶対に写真を撮りあったりなんてしないから、こういうのはちょっと新鮮だったりする。山登りはやはり解放的なのだろうか。
しばらくして5人のパーティや女性も到着すると山頂がにぎやかになった。
谷に下りていく渓流釣りと山に登っていくのとでは、同じ自然を相手にする遊びであってもメンタル的にはかなり違うのだというのがよくわかる。
山頂の気温は8℃ほどだった。山頂の強風は想像しただけでも恐ろしかったが、ここへ上がってくるまでの強風は不思議となりを潜めていた。
それでも体が止まったとたんに寒くなってきたので、またジャージとパーカを着込んだ。
虹の色が濃くなっていた。しかもその奥にもうひと筋の虹が見えた。
今年は釣りのシーズン中、天気にめぐまれないことが多かった。特に夏以降は台風も多く散々だった。
天気の神様が「ちょっとごめんな、色々あってさ、これでま、かんべんしてよ」
といってでもいるようなすばらしい景色を見ることができた。
風がそれほどでもなかったので半分あきらめていたコーヒーを入れた。
ストーブはSOTOのマイクロレギュレーターストーブ ウインドマスター。これもハイキング用に購入したものだが、使ってみてびっくりした。風はそれほどでもない、とはいえそれなりに強いのだ。並みのストーブでは炎が飛ばされてしまって、沸騰までに時間がかかるところだが、なんとあっという間に湧いてしまった。コーヒーのパックを開けカップにセットしてゴミを片付けたりしているうちに勢いよく蒸気がふき出してきた。そんな感じだった。
もっともこれまで使っていたのがもう10数年も前に買った大きくて重いストーブだから比較にもならないかもしれないが。
もうひとつ今回の山行で導入した山と高原地図アプリ、地図1枚分のデータダウンロードに500円かかるので迷ったのだが、ためしにと使ってみた。結果は自分がいる位置がかなり正確に把握できるので、山初心者にとっては心強かった。歩いたルートが記録できるようになっているのだが、今回は操作を間違えて記録できなかったのが残念だったが。
大霧山山頂で30分ちょっと休憩し、下りをスタート。
しばらくはなだらかな尾根道が続く、山頂からの続きで眺望もよかった。
その後は杉林の中を単調に下っていく。山の反対側になったためかあれほど吹き荒れていた風はほとんど吹いていない。
もう追いついてくる人もいない静かな山道をひとりで歩く。
杉に囲まれていた道だったが西側が杉ではなく落葉樹に変わってきた。こんな変化も気分が変わってうれしい。
小さな祠があってその先に
旧定峰峠の標識が立っていた。祠は峠を祀ったものなのだろうか。
ダイダラボッチの伝説の看板もあった。粥新田峠は粥仁田峠と書かれていてダイダラボッチが粥を煮たところだったそうだ。
ここには経塚というバス停へと下りるエスケープルートもつながっていた。この道を下る人も多いようだった。
20分ほど下ってきて下を見ると車道が見えた。しばらく平坦な山道のすぐ下を車道が併走するように続いていた。
平らな尾根道の先に獅子岩という奇岩がある。
これは人が手を加えたんじゃないかと疑いたくなるくらい、立派なライオンの形をしていた。
獅子岩を過ぎるとのぼりが急になった。頂上で着たジャケットを脱ぐほどではないが息が弾んだ。
ゴールの白石車庫バス停まではコースガイド通りならあと1時間弱、1時10分ぐらいには着いてしまう。バスは2時38分までない。ゆっくり登ることにする。
上りのピークを過ぎると道の傍らにひとつだけポツンと石積みがあったり、古い道の名残のような石垣があったりとこのあたりは道の表情にも変化があって楽しかった。
そして上りの道のお返しのような急な下りの先は
定峰峠に着いた。
1軒ある峠の茶店、時間は12時50分、バス停までは30分ほどの下りだからまだ早すぎる。ここで一休みしていくことにした。
缶ビールと味噌おでんで乾杯、らっきょうの突き出し付きだった。
30分ばかりの休憩後、最後の下り道へ。
この先で下りの山道に入る。
ここから下りていく。
つづら折にたたまれた車道を串ざすようにまっすぐ下っていく。あぶなくはないが急な下りだ。下りだからいいが、ここを登ってくるのはそうとうしんどいだろう。
車道を2回横切って、最後は3度目に出た車道を歩く。
定峰峠の鬼うどんという店、先ほどの峠の茶店に入るとき、この鬼うどんとどちらがいいかちょと迷った。しかし、鬼うどんは休みだったので峠の茶店に入ってよかったのだった。
車道を歩いていくと今日はじめてといえる紅葉に出会った。
ここからほんの5分でバス停に着いた、午後2時ちょうどだった。バスの出発まではまだだいぶあるので、もう一度お湯を沸かしてコーヒーを入れ、残してあったパンを食べた。
コースガイドでは3時間のコースとなっているが、実際歩いてみると4時間近くかかった。初っ端から道を間違えたり後半は帰りのバスの時間に合わせてあえてペースを落としたりしたのでまあこんなものだろうとは思う。
大霧山までは強風に先が思いやられたが、山頂到着以後は風も気にならなくなり、快適に歩けた。なにより山頂からのパノラマと虹の美しさに感激した低山ハイキング第2弾だった。
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