令和初釣行

wind knot

2019年05月12日 14:50






 長かったゴールデンウィークも終わった8日と9日にかけて、やっと釣りに行ってきた。GW中にさんざんたたかれて厳しい釣りになるだろうとは思ったが案の定で1日目は苦労した。





 この川には4月の初めにも訪れていたが、そのときは冬枯れのままだった景色は一変、新緑が輝いていた。雲一つない青空に山の緑がまぶしい。





 深い谷の底にも5月の陽光が差し込んでこの流れがこんなに明るかったのかと驚くほどだった。季節が進めば頭上の木々はよりうっそうと葉の密度を増して昼でも薄暗くなってくる。川を歩くには今が一番いい季節だ。





 大汗をかきながら40分ほど山道を歩いて川に下りた。谷底の空気はひんやりと冷たくて汗はすぐに引いていく。水温は9℃ほどで思ったほど上がってはいなかった。新緑に包まれた水辺を歩くのは気持ちがいいが魚からの反応は得られなかった。入渓点からすこし進むと小さな落ち込みが連続して泡だまりや反転流が次々と現れる好ポイントなのだがまったく音沙汰がない。昨年尺ものをあげた泡だまりは減水気味ながら今回も健在だったがイワナの気配はなかった。





 昨年もGW明けに来てそれでも尺が出た川だ、いないわけはないとは思うのだが今年は超の付くような大型GW、昨年とは勝手が違うようだ。うーん甘くないなー、とため息をつきながら遡行を続けた。





 昼もとっくにすぎたころやっと1匹目のかわいいイワナが釣れた。かわいくても令和になって初めての釣行で釣れた令和ファーストフィッシュだ。だが記念の魚としてはいささか物足りない。よし、次はサイズアップだと気合を入れなおしてロッドを振る。





 だが気合は空回りを続けて、ここはいるだろうというポイントに浮かべたフライはのんびりとぽっかりとただ浮き続けるだけだった。





 一度だけ魚影を見つけた。垂直に立ち上がった岩の前にイワナが定位していた。ライズはしなかったがときおり餌を追うように手前の流れに出てきてはまた岩の前にもどる。

 こいつはいただきか、いや手前の流れにティペットを引かれてドラッグがかかれば一発で警戒されそうだ。フライは岩の前にふわっと落としてティペットは手前の流れに逆U字でのせていきたい。慎重に間合いをはかってキャスト。あー、ショートだ、フライが手前の流れに乗ってしまった。失敗かと思ったがかすかな水面の盛り上がりとともにフライが吸い込まれた。出た!と思ったがフッキングはしなかった。そしてイワナはどこかに隠れてしまった。 ほんとうに数少ないチャンスをものにできずにまったくの無念だった。





 退渓地点がもう近づいてきたころ、またかわいいのを釣った。さっき逃したやつはもう一回りは大きかったなとまた悔しさがよみがえった。この先で渓相が少し変わってフラットな流れになる。最後のチャンスに期待するしかなかった。








 もう最後の最後、というポイントで立て続けに2匹のイワナがヒット。18cmと21cmといったところだったがとりあえずはネットインサイズ。源流のイワナらしく尾びれの先端が欠けたりはしているが散りばめられた斑紋の美しい魚体だった。最後になんとかかっこうをつけることができてほっとした。


 1時間かけて車にもどると朝はなかった車が2台止まっていた。しばらくすると釣り人が1人もどってきたので立ち話をしているともう1人もどってきてどうだったかと声をかけてきた。ここでも60㎝が出た、とか〇〇川はいったことがあるかとけっこうよくしゃべる人だったがなまりがきつくて聞きとりにくい。〇〇川はいったことがないがこのあたりで釣れる川はあるの?と聞くと突然、川は人に聞くもんじゃない自分で探すんだ、人に聞くくらいなら釣りなんかやめたほうがいい、と怒り出した。聞いてもいない川のことだの過去の釣果だのべらべらとしゃべっていたくせに、となんだかあきれる思いだった。すっかりしらけてしまったので、さあ帰ろうとさっさと車に乗ることにした。

 初対面の釣り人の話はだいたい眉に唾して聞くのが常識ともいう。「釣りの話をするときは両手をしばっておけ」そんなことは百も承知でおたがいの経験を語りあうものだろう。まあ、聞いたこちらもいけなかったのだがいきなり怒り出されては話にならない。よくも悪しくも法螺半分の釣り話を楽しめるだけの余裕を持たなくちゃいけないな、と車の中で考えた。






 移動してきたのは今回も上野村のヴィラ裏、テントを設営して温泉につかってあとはビールと焚火のお決まりのコースだ。今頃は6時をすぎてもまだ明るくてイブニングの釣りを楽しむフライマンも数人いた。とりあえず1杯やってからロッドを振ろうかと思ったが1杯やったらもうその気は失せてしまった。だいたい老眼で光量不足にはめっぽう弱い。イブニングはやってみてもわが身の衰えを再確認するだけだ。

 そのかわりに翌朝は5時から釣りを始めた。先月のようなまとまったライズはないがそれでもぽつぽつと広がる波紋をねらって釣る。ストーンフライには反応がなく、♯24ほどのユスリカ、♯20のメイフライで3匹のヤマメを釣った。








 最初のヤマメのストマック、ユスリカピューパやらシャックやらに混ざって1匹だけダンが入っていた。

 1時間ほど釣っていると釣り人の姿が一人二人と増えてきた。私のほかにもテントが2張、車中泊らしき車が2台とヴィラ裏の河原は盛況だ。一度テントにもどってさあどうしようかと思案した。2日目は上野村の支流でまたイワナをねらうつもりでいたのだがなんだか疲れてしまった。このままC&Rでヤマメを釣ろうか、昨日はあまり釣れなかったから今日はたくさん釣りたいしな。1本のこしておいたビールにも魅かれるな、と思ったらもうクーラーボックスを開けていた。





 朝飯のときに食べようと思って忘れていたウインナーソーセージをバーナーであぶってつまみにしながらビールを飲んだ。朝からのビールがうまい季節になっていた。ライズを眺めながらの朝からビール、これまた極楽だった。





 そのままうとうととして目が覚めると1時間ばかりがたっていた。釣りを再開する。





 プールでライズをねらったり





 前回よかった護岸際の瀬をねらったり








 爆釣というペースではないがそこそこには釣れた。ヤマメたちはもう瀬に入っていて開きや流心脇での反応がよかった。

 「昨日は渋かったから今日はたくさん釣りたい」という思いは達せられたかな、というくらいの釣りはできたので午前中いっぱいで切りあがることにした。





 ロッドを振りながら車に戻る。瀬頭の緩流部にフライを入れると一発で食ってきた。





 おや、めずらしいイワナがかかった。今年はイワナをけっこう放流しているらしい。ヴィラ裏でイワナを釣ったのはたぶん初めてじゃないかと思う。残念ながら胸鰭の小さい魚で前日の源流イワナとは比べるべくもなかったがちょっとうれしかった。

 令和になってはじめての釣り、GW明けの釣りで渓魚たちはナーバスだろうとは思っていた。1日目は予想通りで厳しかったが、これがGWのプレッシャーのせいなのかたまたまイワナの機嫌が悪かったのかはなんともいえなかった。ヴィラ裏のC&Rこそはプレッシャーも高かったろうが意外とよく釣れた。2日間のトータルではダブルのツ抜けもできてまずまずの釣行だった。


 ヴィラ裏の河原、いつもキャンプをさせてもらっているが今回はタバコの吸い殻やカセットガスのキャップやらゴミが目立ったのでひろってきた。「来た時よりも美しく」というのがアウトドアでの遊びの常識、ここでキャンプをしたりするのはフライマンが多いはずだから、なんとも情けない思いがした。もしかするとGWに訪れた釣りとは関係のない人たちが残したものかもしれないが、いずれにしろゴミや焚火の始末やらきちんとしないとそのうちにキャンプ禁止なんてことにもなりかねない。いつも環境を守ることを気持ちの中心において行動すべきだとあらためて感じた。






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