月曜から2泊3日で南会津に行ってきた。宿は「やまゆきかわゆき」さんにお世話になった。ほんとうは今週末に行われる「里見スクール」に参加したかったのだが、都合がつかなかった。「里見スクール」はそのあと裏磐梯の「風来坊」でも開催されるのだが、これも都合がつかない。スクール参加はあきらめて単独での南会津釣行となった。
月曜の朝、はやめに家を出たつもりだが南会津はやはり遠い。途中の箒川でC&R区間を覗き込んだりしていたせいもあって「やまゆきかわゆき」さんに着いたのはもう9時をとおに過ぎていた。
箒川C&Rエリア、駐車場からのぞいてみるとルアーマンが二人いた。
ちょうど駐車場の真下にでかいニジマスがたくさん泳いでいた。機会があったら一度はここでも釣りをしてみたいと思いつつ、先を急いだ。
「やまゆきかわゆき」でご主人からいろいろと情報を仕入れて川へと向かった。
月曜の天気は快晴、東北の森の上には澄んだ青空が広がっていた。
新緑の森が林道に木漏れ日を輝かせる中をゆっくりと入渓ポイントに向かう。この時期、あたりの川はまだ雪代がおさまっておらず、いくつかの「釣りになりそうな川」を教えてもらった中の本命の流れに入る。
森の緑を映しこんだいかにも東北の渓といった美しい流れだが、この川も雪代はおさまったとはいえまだ水は高く期待はあっけなく打ち砕かれてイワナたちは姿を見せてくれなかった。
何度かの反応はあった。人気の渓であり他の川がまだ時期尚早とあって訪れる釣人も多いらしい。イワナたちの反応はナーバスだった。水温は10時過ぎの入渓時点で10℃を越えるくらいだったが、午後には13℃近くまで上がっていた。瀬の流速は早く、巻きの水面は荒れ気味でイワナたちはフライを追う気持にはなれないようだった。
意外なことに唯一の出会いは落ち込みから続く浅い瀬のひらきでおこった。
流芯脇にいたイワナが下流に流れていくフライを勢いよく追いかけてフライをひったくるようにくわえた。まるで流心の泡の仲から飛び出したように見えたが、いたのはおそらく流芯脇だろう。この1匹だけはまるで夏のイワナのような出方をしてくれたがその後はまた沈黙を守る時間が続いた。それでも何度かあった反応は石裏がほとんどだった。あまり水深のない石裏に隠れているイワナがフライをつつきにくるがばっくり飲み込むような勢いはなく、2度目のバイトもなかった。
がっくりと肩を落として宿へ戻った。同宿のフライマンの話では私よりも上流にはいって何匹かは釣ったという。釣れたのは肩ばかりだったとも。
肩、もしくは瀬尻らしかったが、私の視野にはまったく入っていなかった。瀬のおしりのほうでもまだ流勢は強くイワナが定位しているとは思わなかった。それに走るイワナの姿にも気づくことがなかった。だが、この渓は底が白っぽくてイワナも白っぽいので見えなくても実はいるんだ、ということらしかった。
いい肩にはだいたいイワナが付いているから、スラックをたっぷり入れたキャストでフライをゆっくり流してやれば出てくるという。巻きはだめだったとも。うーん、それはちょっと大外れなねらいをしていたんだとがっくりしたがいい情報を聞かせていただいた。釣り談義は盛り上がり酒量も増す一夜となった。
翌日も朝からの晴天だった。昨夜の酒がまだ少しのこっていた。どこへいこうかとまだ迷っていたが、川を替えたほうがいい、という宿のご主人の言葉に従って檜枝岐へ向かうことにした。まずは手堅く魚を手にしようとC&Rエリアでロッドを振ることにした。
ここで釣りをするのは始めてなのでちょうどエリアの中ほどにあたる「ミニ尾瀬公園」の建物にかかる橋の下流から入ることにした。さいわい釣人の姿は見えなかった。
どこに魚が付いているのかわからなかったが、ここでは肩にはいそうな気配はなかった。小さなえん堤というのか段々になっている下に魚が溜まっているようだった。途中の瀬に魚が溜まっているところもあったが沈んでいてフライのことは見向きもしない魚ばかりだった。この手の魚を深追いするのはやめて段々下を攻めて数匹のイワナを釣り上げた。
白斑が大きくて朱班がないアメマスっぽいイワナ
こちらは白斑はそう大きくはないけれど朱班はほとんど目だたない中間型
白班は小さく朱班のはっきりしたニッコウイワナ。
頭上を覆う樹木もなくロッドは振りやすいが快晴の陽射しをさえぎるものがないので暑くてたまらなくなった。川から上がって教えてもらったそば屋に寄って腹を満たすことにした。
午後は熱さを避けて支流に入った。
ここも水位が高く川通しでの遡行は難しかった。深場に突き当たるたびに河畔林や岸際のブロックの上にエスケープしながらの釣りになってなかなか進まない。
だがイワナの反応はよかった。入ってすぐに小ぶりなイワナがかかった。小さなイワナだが#12のフライをしっかりくわえていた。C&Rのイワナのようにプレッシャーにさらされていないのだろう、流芯脇でゆっくりとフライを吸い込んでくれた。残念なことにカメラを車においてきてしまった。取りに戻るのがめんどうでスマホで写真を撮ったが帰ってからPCのモニターを見てやはり取りにいくべきだったと後悔した。
2匹目はサイズアップ、わき腹あたりがぼこっとふくらんでゴツゴツしていた。ハエとか蜂とかでかいものを食っているようだ。
川幅が広がって森の中を流れる場所は遡行もしやすい。強い日差しも森の緑にさえぎられて涼しい風がふいて行った。至福とも感じられるひと時がすぎてゆく。しかしこうした流れは長くは続かない。
かなりの量のイワナが放流されているらしかったが、釣れるイワナはどれもきれいだった。
8寸ほどのイワナが釣れた。尺物ももちろんいるはずだが、そうかんたんには釣れないようだ。8寸クラスが出ればまずまずということだろうか。このイワナは白縁のはっきりしたヒレの大きい典型的なニッコウイワナだった。
落差のある流れはまったくだめだがその脇のちょっとした石裏のたるみからイワナが飛び出してくる。そんなポイントをひとつずつ探りながら3時間強で300mほどの区間を釣り8匹のイワナを釣った。午前中のC&R区では4匹の釣果だったから合わせてツ抜けもできた。ちょっと早いが川をあがり、日帰り温泉で汗を流してから宿に戻った。
この晩は酒も少し控えめにして9時前には寝てしまった。
最終日、天気は曇り時々晴れ、夜から雨という予報だった。釣りは午前中いっぱいの予定なので檜枝岐まで足を伸ばすのは時間がもったいない気もしたが宿の主人からは「いい思いができたところにいったほうがいい、じゃないと帰ってから後悔する。」といわれた。それはもちろんそうだと思い、前日の川へもう一度入ることにした。もう一度といっても昨日は300mほどの区間しか釣っていない、同じ場所を釣るわけではなかった。
水量豊富のため、できるだけ水勢の弱いところがいいだろうと前日よりも下流の比較的開けたポイントに入ることにした。
入渓してすぐの大きなプールでは数匹の魚影が確認できた。だが見つけた魚は深いところにいてフライを追って浮いてくることはなかったので流れ込みの下のよれをねらってみると一発で食ってきた。
背中が濃いグリーンの美しいイワナだった。
ストマックからはガガンボやら羽蟻らしきものも出てきたが食ったばかりらしいビートルが目立った。いずれにしても水面の捕食物をとらえているようだった。
しばらく釣りあがると大きな底石の沈んだ瀬が続くポイントに出た。この瀬の下は砂が多くなって流れも穏やかにひらいていくのだが、いかにもイワナがいそうな瀬尻では反応がなかった。イワナたちを蹴散らせながら上ってきただけなのかもしれないが、それがひらきにかかるまだ水勢の強いところで急に反応が増えてきた。
といっても流芯ではない、流芯脇のもう岸際といってもいいあたりに大きな底石が沈んでいて石のかげにイワナが潜んでいるのだ。そのイワナたちが水面に向かって勢いよく浮上してくるので、楽しかった。
ここから上は流勢が強くなって釣りにならなかったが、頭を出した白っぽい石の裏の浅場にいたのは思ったよりもいいサイズだった。
勢いのいい流れをパスしてしばらく行くと今度は少し水深のあるゆるやかな流れのプールに出た。
さっきの流れでは魚は瀬尻よりも上の流れにいた。今度はどうだろうと思いながら慎重に最下流にフライを浮かべてみる。だが瀬尻には石も沈んでいないのでイワナはいないようだった。徐々にラインを伸ばし、数10cmきざみでレーンを変えながらフライを流す。曇り空の下で川底は見にくくイワナの着き場はわからない。だが核心はやはり流芯の脇だろう。流芯脇の流れと岸側からの流れが干渉しあうゆるいY字帯でボコッと水面が盛り上がった。だが乗らない。同じような反応を何度かくりかえしてけっきょく水面は静かになった。
フライが着水と同時にボコッと来ることはなく、かなり長い時間フライが流れてから食ってくるためその間にティペットが沈んでしまって合わせがきまらないように思えた。軽くメンディングしてティペットを水面から引き剥がすようにしたほうがいいのかもしれなかった。
少し上流に進んで今度は流芯と緩流帯との境目がもう少しはっきりしたところにフライを落とした。着水と同時というわけではないが今度はわりあいすぐにボコっときてうまくフッキングできた。やはりティペットが沈まなければフッキングできるようだった。
この日は正味2時間半弱で距離にして200mほどの区間を歩き、ちょうど10匹のイワナを釣った。最後に釣ったのが8寸強で一番大きかった。ゆったりと穏やかに流れる東北らしい渓(私のイメージでは東北の渓というのはそうした流れなのだ)でこれだけのイワナが釣れればもう十分だろうと予定通り川がらあがった。
前日とは違うそば屋にいってこの日も名物の裁ちそばを食べた。
山菜のミニ天丼つきの裁ちそばのセットは、満足のいく釣りができたこともあってしみじみとうまかった。
初日こそは大苦戦をしたが2日目、3日目ともいい釣りができた。「やまゆきかわゆき」のご主人からのていねいなアドバイスがなければとてもこうはいかなかった。感謝の南会津釣行だった。
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