元同僚のSさんと赤久縄に行き、中1日おいて近場の渓へ。中1日の間に群馬県の渓流は最終日を迎えてしまったが、さすがにちょっと疲れて連荘の釣行はあきらめた。
当日は夏にもどったかのような快晴の秋空。
この翌日にはまた空は分厚い雲に覆われて夜には激しい雨も降ったのでたまたまラッキーな釣り日和にめぐり合えた。
この渓は6月末に訪れて以来。そのときは小さなヤマメ1匹しか釣れずブログにも載せなかった。今回、シーズン最終盤ときては魚も残っていそうにはないが、過去にはこの時期でもそこそこの釣りができたこともあった。なんとか1匹でもいいから秋色に色づいたヤマメに出会いたかった。
さっそくロッドを振りはじめるとすぐに反応はあるが、どれも極小のヤマメのようだ。そういえば6月末に来たときはヤマメの稚魚だらけだった。やっと1匹の釣果にがっかりして川から上がると地元のおばさんに「釣れたかね?」と声をかけられた。「ぜんぜんダメ、小さいのばっかりだ。」と答えると「今年はなんだか小さいのがうじゃうじゃいるんだよねぇ。こんなのはめずらしいんだ。」と言われた。
あれから3ヶ月足らずでは稚魚たちが釣りの対象になるまで成長するわけもないかと早くもあきらめムードにとらわれる。
入渓してすぐ、水深のある瀬でピチャッとしぶきが上がった。
フライをつつきにくるのはやっぱりこのサイズの稚魚たちだった。#12のフライではほとんど針がかりはしないが、たまにこんなのがかかってしまう。まあまったく生命反応のかけらもないというよりはまだましだが、これではさすがに釣れた、という気にもなれない。
こんな大場所でもチビたちがちょっかいを出しにくる。そのうちにフライをくわえられるサイズも出てくるだろうと釣りあがっていく。
ほどなく流れ出し脇のたるみで茶色い魚影が姿を見せた。
なんとこの渓ではめずらしいイワナがかかった。記録をたどると昨年の3月23日に釣って以来、ここでは久々のイワナだった。釣れたといえるサイズの1匹目がイワナとあってやたらとうれしくなった。天気は最高だし、万一このさきがボウズで終わったとしても今日はいい釣りができたと言えそうな気分だった。
そこから先では小さくてもヒレピンのヤマメが相手をしてくれた。
胸鰭の先がつんととがって金色に透き通ったティアドロップ型をしている。小さくても見とれずにはいられない美しいヤマメたちだった。
川原の木陰で休憩をとった。川原の石に腰を下ろし、パスタをゆで、コーヒーを入れる。今年の釣りでルーティーン化しつつある私流の渓の作法だ。
コーヒーをすすり、タバコをふかして水の流れを見つめる。もう間もなくこの渓も今年のシーズンを終える。来週はいよいよ最後の釣行になるなという思いが胸をかすめたが寂しさは感じなかった。夏のような陽射しの下に感傷は似合わないということか。
休憩のあとしばらくしてたどりついたポイント、ここでは2匹の良型を連続してヒットさせた実績がある。ぽっこりとコブのようにふくらんだ反転流に黒っぽい影があらわれフライが吸い込まれた。
あまりに黒い魚体にまたイワナかと思ったがたっぷりと錆びた色のヤマメだった。22cmはこの日の一番となった。
秋色を通り越して真っ黒な姿は子孫をつなぐための準備万端といったオスのヤマメ。今からあんまり入れ込みすぎると女たちに嫌われるぜ、と流れにもどした。
朝のイワナとこのヤマメでもう十分だったが、退渓点はもう少し先になる。
ヒレピンを1匹追加して退渓点直前の橋の手前で良型がフライを追った。直線的な流れの流芯をわずかに外れた脇、流芯にいたヤマメがフライを追いかけたものの一瞬しな定めをするようなそぶりをみせてUターン。
こいつはなんとかしたいと、フライを替えることにした。いつものメイフライイマージャーからテレストリアルか、はたまたカディスかと迷ったが結局パターンはそのままにフックサイズを2つほど落とすことにした。
息をとめるような思いでロッドを振った。タイトなループを描いたまま着水したラインの先はうまい具合にリーダーを逆U字に保ってゆっくりと流芯脇のレーンを下っていく。今度は瀬尻からフライを迎え撃つようにゆっくりと魚影が浮上してきてそのままフライを飲み込んだ。
さっきフライを追ったヤマメはもう少し大きかったように思えた。釣れたのは瀬尻にいた魚だったから別の魚だったかもしれない。ともあれフライを替えた一投目、キャストも決まってドリフトもねらいどおりのレーンをきれいにトレースできた。ヤマメが浮いてからフライをくわえるまでのシーンもはっきり見えてまさに会心のヒットだった。
このヤマメを最後に渓からあがることにした。
いつもと同じで釣りはじめはどうなることかと思ったが、終わってみれば楽しい釣りができた。ヤマメの稚魚が多いのは発眼卵放流でもあったのかもしれない。この時期これだけのチビヤマメが川にいるということは来シーズンはおもしろい釣りができるかもしれないなと思いながら坂道を登った。
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