先月アップした記事に「赤いストーンフライ」というのがあったが、同じ水系で今度は「赤いヤマメ」の話、といってもストーンフライのときのようなダニの寄生といったグロテスクなものではないのでご安心を。
6日の木曜日に出かけたのだが、前日は会社の大先輩を囲んでのお花見で例のごとく2次会、3次会とよく飲んだ。
これが夜の宴会となるととても翌日は釣りになんぞ行けないところだが、お花見なので3次会が終わってもまだ8時前。早起きはできなかったがなんとか翌朝9時すぎには出発できるまで回復していた。
川に着いたときはもう11時をすぎていて先行者の有無が気になる。いつも林道の車止めの50メートルほど手前に車を止めている。そこから車止めのあたりまで見通せるのだが、駐車している車はないようだった。
前日も暑いくらいの陽気だったが、この日も川に下りても気温は18℃ほどもあった。水温も10℃を越えていよいよ本格的なシーズンの到来で期待はふくらむ。
入渓してほどなく幸先よく1匹目
長い瀬の中間あたり、流芯でヒット。もう盛期の出方といっていい。
進んでいくと車止めのある橋のたもとに車が見えた。あれ、車はいないと思ったのだが木立に隠れて見えなかったようだ。釣人の車とはかぎらないがと思ったが、残念ベストを着たまだ若い男性と地元の人らしき年配の男性がいた。川はこの先で二手に分かれる。
「こんにちは、もう釣ったんですか、どっちの沢へ?」
と声をかけると若い男性が右の沢へ入ったというので、左に入らせてもらうことにした。
年配の男性が「橋の上流でライズしてたよ。」と教えてくれた。
そう、ここはいつもいるとこなんだけど、みんな必ずねらう場所だからなかなかね。
ひざをついて橋の下から慎重にキャスト。左の岸際から右の流芯へと探っていく。
流芯の流れが開いていくところでヒット。
こりゃあちょっとできすぎかも、という釣れ方だ。サイズは2匹とも6寸弱というところだがきれいなヤマメだった。
さらに左の沢の出会いのすぐ上流
落ち込みの下が深くていいのがいそうなんだけど、やはりすぐにすれてしまって手ごわいポイント。流芯の白泡がとぎれる左の流れのよじれでフライがつつかれたがくわえてはいない。
触ってなければまだチャンスはあるかとキャストする。ライズのあったポイントは通り過ぎてもう肩に近いところでゴボッときた。
いいサイズだ、水面を割ったヤマメの姿が真っ赤に見えた。ヤマメが手前の枯れ枝の下に潜り込む。あっという間にティペットが枯れ枝に引っかかって動かなくなる。
まいった、いいサイズだったのに逃げられたかと、枯れ枝に絡んだティペットをほどいていくとククッという手ごたえがある。はずれたかと思ったがまだフライをくわえていた。ていねいにティペットを枝から外してそのままネットイン。
ファイト中に一瞬みえたヤマメが真っ赤に感じたが、真っ赤というのは大げさとはいえ、こうして見ても見事に朱色に色づいている。
この川では赤く色づいたヤマメに出会うことがときおりあるが、ここまで色の濃いものはめずらしかった。錆びている、というのともちょっと違うようで、季節が進んでも赤っぽい体色の個体が釣れる。
サイズは24cmちょうど。この小渓流では年に1度か2度、お目にかかれるかどうかの最大サイズだ。
これはもう完全にできすぎの釣果でこの先ころんでずぶ濡れになったりしないように気をつけようと思うが、顔は自然にゆるんでしまう。前日の酒はすでに抜けているとはいえ、にやけた笑いを顔にはりつけてよたよたと川を歩くオヤジの姿はあまり人には見られたくない。
次のヤマメは黒く錆びの残る体色をしていた。最前の赤いヤマメとまでは行かないがこれも20cm近いまずまずのサイズ。思いついてストマックをのぞいてみた。
いろいろ出てきた。けっこう大型のメイフライのシャック、カディスピューパにブユやユスリカのピューパ、黒いゲジゲジみたいなのは何だろう?
羽モノはひとつも入っていないが、食えそうなものが流れてくればライズはするということなんだろう。
解禁当初はかなりの減水で今シーズンも厳しいかなと思わせた流れはそこそこに回復しているようで、ヤマメ好みの流れから素直な反応が得られるのがなんともうれしい。
今回はもちろんチビヤマメも混ざるのだが、それなりのサイズが中心で足元はよたよたしながら心は軽い。
この川に入るときはこれまでベストを着ていたのだが、今回はバックパックを背負ってきた。ランチは小さな川原でお湯を沸かしてカップヌードルを食べた。食後のコーヒーまで入れて、となるとランチタイムに20~30分もかけることになるから、時間がもったいないと思う人も多いだろう。私はすでに定年の身で釣行回数も昨年より増えているから釣行の際の気持にもゆとりができた。
まだ現役バリバリで仕事に家庭にいそがしく、月に一度か二度の釣行がせいぜいとなれば、そりゃあやっぱり立ったままおにぎりをほおばって、というスタイルになるのはやむをえないだろう。私も川に通い始めたころはそうだったから。
この日は3時半まで釣りをして11匹のヤマメに遊んでもらった。この川では今シーズン一番となりそうなヤマメがすでに出てしまったのがちょっと気がかりだが、いい時期はまだまだこれからだ。
今週末は花見にいく予定だった人には申し訳ないが、ちょうどいい具合に雨が降って来週なかばには川のコンディションもまたよくなりそうで次回の釣行が楽しみだ。
川から上がる途中で畔に小さな花を見つけた。
やっと春だね、とあらためて思った。
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