上野村解禁釣行から帰ってきて、今週は釣りは休もうと思ったのだがなかなかそうはいかない。好天も続いているしやっぱりヒレピンに早く会いたい。中5日の静養期間をおいて今度(3月10日)は日帰りで自然渓流にヤマメを追いに行った。
足のほうはまだまだ痛みがとれずにいるが長い距離でなければなんとか歩けないことはない。車を止めて遡行する分だけ林道を下るくらいなら問題はなさそうだった。
この時期、早く渓に立ってもヤマメたちはまだ動きだしていないだろうからゆっくり出発、9時過ぎに川に着いた。入渓場所まで10分ほど歩いたが足の痛みもそれほどではなかった。
予想通りで水は少ない。雪は全く残っていないが谷の岩盤に染み出す清水は固く凍っている。空気は冷たいがやさしく湿り気を帯びていて色彩の少ないグレートーンの景色に春の予感を与えているように思えた。
ヤマメたちが目を水面に向けるまではまだ時間がかかりそうだ。ルースニングで様子をみながら釣り上がることにした。
昨シーズンが終わってからルースニングのシステムを見直して前回の上野村でもいい釣りができた。これまでは発泡タイプのインジケーターを使っていたのだがインジケーター自体に重さがあったり、空気抵抗が大きかったりで使いにくさを感じていた。ドライフライの釣りで使うリーダーティペットの長さのままルースニングに移行するとインジケーターがストレスになって私の腕ではスムーズなキャストができない。かといってリーダーを短くすると今度はドリフトに影響が出てくる。
上野村の冬季釣り場でよく見かけるサイドワインダーというインジケーターも使ってみた。たしかにキャスティングのストレスはほとんど感じないしよく見えてこれはいいかも、と思った。ただ水面に浮かぶその大きさがなにやら気恥ずかしく見えて感覚的になじめなかった。棚の調整ができないというのも不便だった。
今つかっているのはお手製のいわゆるヤーン型のインジケーターだが市販されているものよりもヤーンの量をごく少なくしている。ヤーンはティムコのハイビズドライウィングで一束分を切り出して二つ折りにしているから二束分を取り付けていることになる。ティムコのサイトでもドライウィングを使ったインジケーターの制作方法が公開されているが使用するドライウィングの量が桁外れというほど多い。ドライウィングをたくさん消費させようという魂胆があるんじゃないかと疑うくらいだが、あれだと空気抵抗もばかにならないんじゃないかと思える。
ドライウィング二束分というと私の場合で#14のフライに取り付けるくらいの分量だから空気抵抗はほとんど気にならない。これをティペットに通して両端に可動式の結びコブをつくって止める。感度、視認性ともにすこぶる良好でほとんどドライフライ感覚でキャストできるためキャスティングのストレスが大幅に軽減できた。
浮力についてはよほどのヘビーウェイトニンフでなければ問題ないレベルだろう。#18ノーウェイトカワゲラニンフの上20㎝ほどのところに少量の粘土オモリを付けているがこのシステムで40㎝オーバーのハコスチからちびヤマメまでフライをくわえてくれる。
話がそれてしまったがキャストを始めてほどなくインジケーターがすっと引き込まれた。
まったくもってちいさく可愛らしい春の使者だ。もちろんちいさくてもヒレピン、入渓そうそうの春の出会いはたとえちいさくてもうれしい。
インジケーターはこのサイズのヤマメのあたりもしっかりとらえてくれる。ただ、いちど沈んだら再び水面に立ち上がってはくれない。この点はそのまま釣りを続けられる発泡タイプのインジケーターに軍配が上がる。
同じ流れで早くも2匹目、少しだけサイズアップ。
ここで出たヤマメはインジケーターにアタックしてきた。神流川ではインジケーターに出たヤマメの口をティペットがそのままスルーしてフライがフッキングしたことが2度あった。発泡タイプと違って引っかかりが少ないため大きく吐きだすことをしないのかもしれない。ニセのドライフライ、食ったヤマメはさぞかし悔しかったろう。
ドライでもいけそうだがもう少しルースニングを続ける。ここは出そうだという流れからはまずまずの反応が得られたが相変わらずの可愛らしさ。それでも少しずつサイズアップしているような。
この区間いちばんの大場所、ここはじっくりと攻めたい。
手前の落ち葉が堆積するシャローから瀬尻と順番にフライを流してみるが水の動きがないところでは反応がない。岩盤沿いの水深がある流れから2匹続けて出たがサイズは伸び悩み。もうひと声だ、とつぶやく。
上流の岩盤が少し出っ張ったところ、水流に若干の変化がある。水底でナイフのような白い光が反転した。インジケーターに変化は出なかった。これまでのヤマメとは明らかに異なる大物だ。ひとつ大きく息をはいてリラックスする。慎重に、だが鋭く一発で決めないと次はないと自分にいいきかせる。キャスト後すぐにロッドを右に倒してラインを流れに乗せる。フライは狙い通りに着水した。岩盤の出っ張りを過ぎたところでインジケーターがゆっくりと沈んでいく。よしやった、いいヤマメだ、頼むからバレないでくれと祈りながらラインを手繰る。
25㎝、たっぷりと錆びたいぶし銀の魚体からは里のヤマメにはないサイズ以上の風格さえ感じた。インジケーターに反応するヤマメもいてドライフライに替えようかと思いながらもルースニングを続けていたのがよかった。このヤマメはたぶんドライフライには出てこなかっただろう。フライは冬季釣り場からずっと活躍を続けている#18のストーンフライニンフ、今回もいい仕事をしてくれた。
このヤマメを釣ったところでランチタイムにした。河畔に腰を下ろしてパスタをゆでた。渓流パスタも久しぶりだ。デザートはコンビニのシュークリーム、コーヒーをすすりゆっくりタバコを吸う。いまや下界のカフェでは味わえないコーヒーアンドシガレット、渓流カフェならではのリラックスタイム。
満足のいくヤマメにも会えたのでランチの後はドライフライでのんびりと釣り上がっていく。
朝は5℃弱だった水温も8℃まで上がっていてドライフライへの反応は良かった。先ほどのような大物とはいかないがそこそこの春のヤマメが#16のメイフライイマージャーを素直にくわえてくれた。
穏やかに流れる澄んだ水を弾丸のように突き破った春色ぷっくりヤマメ。
大岩の影から急浮上、ドルフィンジャンプをみせてくれて思わずこちらもオッシャー!と叫んでしまった。さらにはグルグルと激しいローリングまでしてくれたアクションスター、サイズも21cmあって申し分ないヤマメだった。
退渓場所となるえん堤、いつも春先はここでいい思いができるのだが今回はかわいいヤマメばかりだった。
ちいさくてもヒレピンから始まってサイズは小型が多かったが、思わぬ大物もふくめていくつかいいサイズが釣れた。足の痛みも忘れさせてくれる釣行となった。
にほんブログ村