濁りの中ノ沢~本谷で救われる

wind knot

2021年07月05日 21:43






 先週、6月30日の水曜、上野村の本谷に行ってきた。
数日前から天気予報とにらめっこをしながら出撃の機会をうかがっていて当初は中ノ沢に予約をしていた。

 釣行前日の火曜日に漁協から連絡があって中ノ沢はすこし濁りが入り始めているのでどうしますか?とのことだった。
梅雨の最中のことである程度の雨は覚悟の上だが予報では釣行を中止するほどのことはなさそうだった。とりあえず行ってみて決めようと答えておいた。

 そして翌日、午前3時に起床してすぐに現地の天気を確認。夜のあいだに雨は降っていたようだったが雨量はたいしたものではなさそうだった。これなら大丈夫だろうとまだ暗いうちに出発した。

 細かい霧のような雨が断続的に降っていてフロントガラスを曇らせる。ときおりワイパーを動かして視界を確保しながら上野村を目指した。前日の夕方に役場前のライブカメラを確認したところでは少し水は増えているようだったが濁りはなかったのでこの程度の雨なら心配はなさそうだった。

 ところが国道が神流町に入り南甘漁協管内にさしかかったところで川を覗くとなんと見事なカフェオレ色をしている。まさか、と悪い夢でもみているような気分だった。

 いつものパターンでまずはヴィラのC&Rエリアにおりてみたが当然ながらここも濁流でとても釣りができる状態ではない。時間はまだ6時前、毛ばり専用区にはいる前にC&Rエリアを2時間ばかり釣っておくのが楽しみなのだがそれどころではなかった。仕方がない、とりあえず専用区の状態をみておくことにした。

 中ノ沢は濁りは本流ほどではないようだったが水量はかなりのものでここで釣りをするとなると命がけの覚悟が必要そうだった。こうなるとあとは本谷にかけるしかない。祈る思いでトンネルを抜けるとそこはまるで別世界だった。前日にダムの放水があったそうで水量はやや多い感じだったが濁りはなかった。よかった、ここまできてロッドを振らずに帰るわけにはいかないよね、と胸をなでおろす。

 ほっとして川の駅が開くのを待っていると漁協の青年がやってきたので本谷へのチェンジを申し入れた。幸い本谷の予約は1区間だけだったので無事に入渓できることになった。ちなみに中ノ沢はあと1名の予約が入っているそうだった。びっくりしたのは本谷のもう1区間を予約していたのが昨年の11月に赤久縄とこの川の駅ニジマス専用区で釣りとキャンプをご一緒させていただいたブログ「明日釣りに行くんで会社休みます」のOSSANさんだったこと。およそ半年ぶりのまさかの邂逅だった。

OSSANとは互いの最近の釣りなどを情報交換してそれぞれの区間に向かった。今回わたしが選んだのは4番、さてどんなものかとフライを流すとすぐにフライを追う魚影が見えるが直前でUターン。しかもそれが3度ほど続いた。





 フライは♯14のテレストリアルだったが、どうも魚たちはお気に召さないようだった。今回の釣行用に巻いてきたフライだったからちょっとがっかりしたが、気に入らないというものは仕方がない。すぐにいつものフライに結び替えることにした。





 水はやや高めなので流速のある芯よりも大場所の緩めに流れるバブルレーンや流心脇がねらい目だろうと思えた。あまり深いところからは出てこないような気もした。前日は定休日でだれも入っていないから岸に近い浅いところに魚が付いている可能性もありそうだった。





 最初の魚はねらいどおりでかなりラフな早い流れの脇、岸際の浅場から出た。





 20㎝ほどのヤマメだった。こういう場所は釣れる確率は高そうだったがサイズは望めないかもしれない気がした。





 今度はいくつもの落ち込みからの流れが収束するポイント。いかにも釣れそうな予感。





 これも大きくはないけれどねらいどおりでうれしい1匹。





 直後にもう1匹追加したあと、しばらく釣れない時間が続いた。すっぽ抜けやバラシが何度かあってラフな水面でも見やすいようにフライは♯12に替えてある。






 次の1匹が釣れた場所はあまりよく覚えていないのだがこうしてみるとたぶん左側にちょっと突き出した岩と真中に黒っぽく見える沈み石がつくる流れの変化についていたのかなと推測できる。ポイントとしてはそれほどおいしそうには見えなかったのだが。出てきてくれたのは驚くほどの大物だった。食った瞬間はたしか水面がピチャっというくらいのあたりで大物だとは思っていなかった。





 ちょうど40㎝の立派なヤマメだった。足元の浅い流れにうまく誘導できてそれほど苦労せずに取り込めたがひとつ下に落としていたら危ないところだった。

 このあとまたしばらく静かな時間があって12時半前に4番の終点に着いた。時間があるのでパスタとコーヒーでゆっくりランチタイムを過ごす。





 3番のスタート、2段えん堤の下の段。真ん中のいくつかの流れの筋で出てくれることもあるがこの日は反応なし。





 左側の流れ、水勢が強く落ち込みから岸際まではフライがあっという間に流れてしまう。岸際のごく浅い流れを手前から徐々に奥へとフライを浮かべていく。





 答えはすぐに出た。予想よりも手前でフライをくわえたのは30㎝のヤマメだった。このあと奥まで探ってみたが反応はなかった。





 今度は右側の落ち込みに向かって探りをいれていく。本命の沈み石の角でフライを追いかけるようにくわえた。





 31㎝のヤマメ。ここは昔はイワナのポイントだったと思うのだがこの数年はヤマメの付き場になっているようだ。

 上のえん堤下はけっこう水量があって奥まで立ちこむのが面倒になってパスすることにした。3分の1くらいまで進んでみたが目立った反応はなかった。このころから流れには濁りが入りはじめていた。





 いったん階段をあがってえん堤上に入りなおす。ささ濁りというよりも強めの濁りに変わってきた。瀬の終わりに近いところで沈み石の前に付いた良型が何度もフライを見に浮上してくるが寸前で見切る。沈み石の直前で流速が変化するためドラッグ回避が難しい流れだった。

 その魚をあきらめて流心にフライを流すといきなりでかいのがフライに飛びついてきた。よし、とロッドを立てると一瞬の手ごたえを残してフライが宙を舞った。

 ゴワーッ でかかった!! 久しぶりに天を仰いだ。後方の枝に取られたフライを回収し、タバコに火をつけた。もうでないだろうなと観念しつつ、対岸のゆるい流れをねらってみる。しばらくしてさっきの流心に目をやるとたぶんあのヤマメが戻ってきていた。

 イワナならもう1回もあるだろうが、ヤマメだからな、しかも尺を優に超えるような大物となると2度目はないよな、だけどもしかすると別の魚かもしれないしな、と思いつつキャストする。2度、3度と反応はする。だが、これをくり返せばすぐに無視されるようになるのは目に見えている。チャンスはあと1度か2度がいいところだろう。獲物の鼻先50㎝を目標に逆U字にフライを落としたい。ということはさらに50㎝先にループの先端を着水させるつもりでキャストする。

 ループの先端はきれいなU字には程遠く、クシャッとスラックになったがフライはうまいこと鼻先50㎝に落ちた。ヤマメがクワッと口を開けた。

 よっしゃー!食った!





 今度は37㎝、4番で出たヤマメよりも一回り小さかったが口の大きい均整のとれた迫力のあるボディの魚だった。何よりもこのヤマメをほぼサイトフィッシングでねらって釣ることができたのは最高に楽しい時間だった。

 濁りのせいかこの後はあたりも遠のいてきたので退渓することにした。休憩小屋に戻るとOSSANの車はまだあった。さらに朝はなかった車も止まっていた。もう一人中ノ沢に予約があるということだったが、その人がやはりこちらに変更してきたのかなと想像しつつ帰り支度をした。
 




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