ストーンフライじゃなくて

wind knot

2020年03月15日 21:38

 今シーズンになってすでに5日間つりをしてきた。3日目の上野村は強風でほとんど釣りにならず、ボウズで帰ってきたがあとの4日間は釣果の差こそあれ、早春のフライフィッシングを楽しむことができた。ここまでの釣りでキーポイントになったのはやはりストーンフライ、カワゲラのハッチだろう。

 ストーンフライというとつい大型のスティミュレーターやイエローサリーなどというパターンが想起されてジャパニーズスタイルのミッジングとは別もののイメージがある。フライフィッシングを始めたころに手にしていたタイイングの教本にはストーンフライという項目はまずなかったし、雑誌などに出てくるものは前述のような大型のフライばかりだった。そういう大型フライもためしに巻いてみたことはあるがめったに使うチャンスにはめぐり合わなかった。

 クロカワゲラという虫がいることは昔から知っていたと思うが、クロカワゲラにマッチさせるためのフライについては知らなかったしあまり興味もなかったように思う。神流川のC&Rができたころからずっと早春のライズといえばユスリカのハッチと決まっていたものだが、あるころからユスリカもいいけどカワゲラもいいんじゃないかと思うようになってきた。それは虫たちの勢力分布が変わってきたからなのか今まで気づかずにいただけなのかはわからないが、この数年はユスリカよりもカワゲラ、な気がしている。今シーズンのスタートでいえば圧倒的にカワゲラを意識した釣りが有利なのだ。





 これは前回の記事で載せたストマックの写真で真ん中に写っているのがサイズも本物にほぼぴったりのカワゲラフライだ。カワゲラのフライについては過去に何度か触れたことがある。体長7㎜というサイズにこだわったエクステンドボディのフライでこれはよく釣れるのだがなにしろ作るのが面倒くさい。


写真をクリックで過去記事にジャンプ


 まずエクステンドボディを作ってからそのボディと他のマテリアルをVARIVASの2300の♯24という小さなフックに巻きとめるのがとにかく疲れる。そこで今回は手抜きをして♯16のフックにボディを巻いた簡易版のカワゲラで臨んだのだ。





 フックはVARIVAS2110の♯16、シャンク長ほぼ7㎜の細軸フックがカワゲラにちょうどマッチすると考えた。結果は写真の通りで美麗ヤマメを釣ることができたのだが、機能的にはやや課題があった。ハックルを巻かないため浮力を得るのはインジケーターのエアロドライウィングだけなのでどうしても沈みやすいのだ。鏡のような穏やかな水面ならいいのだが少しでもラフな流れがあって水をかぶると沈んでしまう。完全に沈むわけじゃなくてエアロドライの先っぽが辛うじて水面に顔を出すくらいには浮くのだがこれだと見にくいし魚の反応も悪い。

 やはり面倒がらずにエクステンドボディのフライを巻くべし、というのが結論といえた。前回は♯24のフックに巻いたのだがちょうどこのサイズのストックが切れていたので♯22に巻くことにした。





 左が2110の♯16で右は2300の♯22だ。まあこれだけサイズに差があればフライの重さもとうぜんかなり違うから沈みやすいのは仕方がないということだろう。





 まずはボディを作らないと始まらない。この極小のエクステンドボディを作るのにもだいぶ慣れてきた。





 完成フライの体長は本物に合わせて7㎜にするわけだが、ボディの成型時はだいたい10㎜ぐらいを目安に作っている。








 裁縫用の針にポリフィルムを巻き付け、スレッドでリブを巻きマジックで着色してからUVレジンをコーティングして作る、中空のエクステンドボディ。見た目にはいかにもな虫っぽさを感じるのだが、魚たちもそれなりにそう見てくれているようだ。





 2300の♯22、ULTRA MIDGE 4X Fine というフック





 シャンクは4㎜弱、マイクロバーブという一応バーブがついているのでこれは念のためにつぶしている。だいたいシャンクの中心あたりにボディを巻きとめる。♯22にしたこともあって作業がすこし楽になった気がした。





 エクステンドボディ、レッグ、ウィング、インジケーターを順に巻きとめていく。レッグにはカーフテイルを使う。最初の写真に写っているカワゲラを見るとレッグがけっこうな存在感を示している。カーフテイルはアンダーウィングも兼ねてフックの上下にやや多めにつけることにした。オーバーウィングはボディ材と同じポリフィルムを細くカットして巻きとめる。ウィングはカワゲラのもっともカワゲラらしい特徴の部位だが、マテリアルのポリフィルムが極薄ということもあって数匹の魚を釣るとだいたいちぎれてなくなってしまう。オーバーウィングがなくてもアンダーウィングが残っていればまだなんとかなるんじゃないかと考えてカーフテイルを多めにした。

 インジケーターのエアロドライはこれまで1束の1/3を使っていたのを少し増やして1/2にした。多少の浮力UPを期待している。ソラックスにはスーパーファインダビングをごく少量ダビングしてボリュームをつけた。





 これで完成時のサイズは約8-9㎜ほど、前回よりも少しだけ大きめにしてある。フックが1サイズ大きいこともあるので全体もサイズアップしてみた。今シーズンの感触をフィードバックしてバージョンアップしたカワゲラフライ、これで次回の釣行は爆釣まちがいなし!といってくれないだろうか。





 上野村ではカワゲラがあきられたところでこのフライにもヒットがあったのでついでに巻いておいた。小型のメイフライスペントのつもりなのだがサイズ的にはカワゲラとほぼ同じなのでこれもカワゲラのハッチマッチャーとして通用するのだろう。


 タイトルの「ストーンフライじゃなくて」だが、現在ストーンフライといえばクロカワゲラまたはオナシカワゲラをさすことが多いのだろうと思う。昔のようにストーンフライ イコール♯10前後の巨大なフライを思い浮かべる人はあまりいないだろう。極小のストーンフライなんていう言い方もされていたクロカワゲラやオナシカワゲラの仲間には雪虫とも呼ばれる雪渓カワゲラなんていう種類もある。

 カゲロウはメイフライといっても違和感がない。むしろフライフィッシングの共通語としてメイフライは定着しているんだろうと思う。大きなウィングをパッと立てたその姿もティンカーベルのような飛翔の姿もなんとなく華やかでメイフライという呼び方が似合うのだ。一方のカワゲラは地味な見た目はもちろんだがつい最近までフライフィッシングの表舞台に現れることなく密かに、しかししっかりと存在感を示していたところがなんとなく日本人好みのわびさびに通ずるような気もする。雪虫をさしてぜったいにストーンフライなんていっちゃだめだろう。雪虫だけじゃなくても、私にとってはこのフライは「ストーンフライじゃなくてやっぱりカワゲラのフライ」なのだ。







にほんブログ村








あなたにおススメの記事
関連記事