ナンテコッタ!から始まった丹沢ホームだが、1日目はなんとか釣りも成立して”縛りのある釣り”もそれはそれで面白かった。夜は名物の合鴨を1.5人前にしてもらいビールも2本、たらふく食って飲んだ。たっぷり睡眠もとって2日目の朝飯がまたうまかった。
借り物のフライと最低限の道具での2日目の釣りは駐車場下からスタートした。
何年振りかでバンブーロッドなどを振ってみた。シーズン中は携帯性が悪いので使うことがないがオフの管理釣り場なら携帯性を考えることもないのでたまにはのんびりバンブーを振ってみるのもいい。だがいつものカーボンロッドとはやはり勝手が違う、最初の一振り、二振りとねらい通りのコントロールができない。うまくスラックが作れなかったティペットに引っ張られてフライがサーっと下流に逃げる。白泡の中からそのフライを追って魚がダッシュした。
しまった、朝一でついうっかり調子に乗って追いかけちまったといいたげなニジマスだった。こちらは今日も朝から活性がいいんじゃないかと、悪い気はしなかった。
さらにニジマスを追加した後、落ち込みにはさまれた石裏、左の落ち込み脇に入ったフライが石に沿って右に流れるのを右の落ち込みに潜んでいたイワナが吸い込んだ。
イワナらしいスポットからイワナらしい食い方で釣れたお腹の黄色いイワナ、ねらい通りの釣れかたで気持ちが良かった。すっぽりとフライを飲み込んでくれたのはよかったが、フライは口の奥に刺さっていて道具がないとフックが外せそうになかった。
実は前日も危惧していたのはフライを飲まれたときにどうするかだった。フォーセップももちろんチェストパックにくっつけてあるので手元にはなかった。失くした時のために予備もパックに入れてあるのだがそのパックごとないのだから話にならない。幸い1日目はフライを飲み込んだ魚がいなかったので助かったのだが、2日目はいきなりきた。
だが、この朝準備をしていてひらめいたことがあったのだ。
ひらめいたといってもまったく大した話ではなくて恐縮なのだが車の中にぶら下げてあった年券に付いている安全ピン、こいつにピンときた(下手なダジャレだ)。これってひょっとしたら針外しの代用になるんじゃないかと思ったのだ。そして思惑は的中、飲まれたフックをうまく外すことができた。ピンのロックを外しティペットを通したらロックを閉じる。後はピンのワイヤーをフライのベンドに持ってきてフックを奥に押して外せばOK、餌釣りの針外しと同じ使い方だ。
ついでにもうひとつ、いつも首にタオルをかけて釣りをしているのだが、今シーズンは誕生日のプレゼントにもらった今治の綿スカーフを使っている。これが吸水性抜群、しかも速乾性でフライの水分を取るのに便利なのだ。安全ピンはこのタオルに刺しておくとすぐに使えて具合がよかった。さらに安全ピンはクラッシュしたティペットをほどくのにも活躍してくれた。1本の安全ピン、持っててよかったと思った。↑の写真はこんな感じというサンプル、ちなみに斜めかけしているのは小物類を入れて歩いたサコッシュ。チェストパックの代わりに使った。
フライ専用の道具はそれはもちろん便利だし、見かけもいいが、身の回りのものでも工夫次第で釣りに使えるというのが今回の釣行でよくわかった。なにかと持ち歩かなければならない道具が多いのがフライフィッシングの特徴でそれがまた楽しいのだが、できるだけ持たずに少なくシンプルにするべきだなとも思うのだった。
ほとんど水の動きがないような浅場、こんなところにいるのも盛期とは違うということなんだろう。
白点が大きいアメマス系のイワナ、関東ではこういうのは珍しいかも、放流魚にはいろんなのが混ざっているのだろう。
2日目は明らかにイワナの活性が高かった。釣り始めてすぐに上流に釣り人をみつけた。3人ほどが入れ替わりで姿を見せていた。気にせずに釣り上がっていったが、そこそこに反応がありフライをくわえてくれるイワナがいた。どのイワナも流心から離れた浅場や石裏でフライをくわえた。瀬や流速のある反転流から反応はなかった。
護岸際のなんでもない流れ、こんなところにイワナがいるなんて思われなかったのか、こんなところで釣ってもしょうがないと思われたのか。
でも、こんなところにいいのがいるのだ。
2日間の釣りのラストは体全体が黄色みがかったイワナだった。ちょうどお昼になったところで川から上がった。駐車場に戻ると帰り支度をしている釣り人がいた。話を聞くとフライは渓流から入って今は湖が中心だとのことだったが、今日は10ftのロングロッドを使ったニンフの釣りでたくさん釣ったという。いわゆるヨーロピアンニンフィングという釣り方らしかった。餌釣りと同じで水深のある瀬の底にいるような魚はよく釣れるのだろう、なるほど瀬からは反応がないわけだ。推測でしかないが餌釣りでもねらいにくいという浅場やピンポイントの石裏などに隠れているイワナは残っていたということのようだ。
借りていたフライボックスを最後にホームに返しに行った。1本もロストせずに返すことができてほっとした。前回の記事にfarwaterさんから「借りたフライに文句を言って」とコメントをいただいてしまった。
まったくその通りで大汗である。ただ、有名なパターンであるフライがいまどきのフライに比べると機能の面では見劣りがすることに今さらながら驚いたこと。パラシュートもハックルはパラっと巻く、ポストは短いほうがいいというちょっとした定説も私にとっては浮かない、見にくい、の再発見だったことを伝えたかった。
そしてそういうフライをうまくドリフトさせるにはさらにキャスティングの精度が求められることにも気が付いた。見にくい→視線の向いている位置に正確にフライを落とす。わずかなドラッグで沈んでしまう→完璧なドラッグフリーが必要、そのためのレーン選択・ティペットの置き方。今回はいい修行になったというわけだ。
フライボックスを落とされた方がこのブログを見ないとも限らない。色々と勝手なことを書いてしまって申し訳ないが、おかげで2日間釣りを楽しむことができた。使わせてもらったことについては心からお礼を申し上げたい。ひょっとすると私のような慌て者がまたこのフライボックスに救われることがあるかもしれない。ぜひとも大目に見ていただけるようお願いします。
それからブログを書いていて特に感じたこと、道具はなけりゃないでもどうにかなるもの、フライ専用のものじゃなくてもカバーできる。これからフライをやってみようかという人はあれこれ揃えなくちゃならなくて大変だ、と思ったら今あるものを使ってもなんとかなる。シンプルにとにかくロッドを振って釣りをしよう、というところから始めればいいのだよなと改めて思うのだった。
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台風の前に行っておこう、などと軽い気持ちで出かけたことが今にしてみれば不謹慎に思えるほどの台風だった。お世話になった丹沢ホームがどうなったか気になっていたが、さきほどやっとフェイスブックが投稿されてスタッフのみなさんも建物も無事だったことがわかってほっとした。そうはいっても停電と道路の寸断で孤立に近い状態のようだ。1日も早い復旧と営業再開ができることを心からお祈りします。
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